ちなみに同インタビューにはジヒョ、ダヒョン、サナも参加しているが、歌詞の内容に関連して当時不安障害で休みがちだったミナのことに触れつつ、他のメンバーもミナと同じような気持ちでいたことを率直に話している。このような心の奥底にある感情を語り、曲でも表現できるようになったのは、育ての親であるJ.Y. Parkの影響もあったのだろうか。
「Feel Special」の大ヒット以降、J.Y. Parkはシングル扱いの楽曲の作詞に積極的に関わっていく。続く「MORE & MORE」(2020年6月)では、<私の目を何度も避けてみて/あなたの気持ちを何度も隠してみて/私から逃げてみて>、<私は野良猫/今日だけはあなたを>と、かなり挑発的な内容で注目を集めたが、これは共作者の女性シンガーソングライター・BIBI(ビビ)のセンスがプラスに作用したようだ。いずれにしても、ミナの調子が戻ってきたこともあるのか、グループの勢いと団結力の強さが伝わってくる華やかな曲調と歌詞は、多くのファンから好意的に評価されている。
そしてこのたびリリースされた「I CAN’T STOP ME」にもJ.Y. Parkは作詞家として参加するわけだが、まず注目してほしいのは共作者として選んだシム・ウンジだ。JYPエンターテインメントが新人作曲家を育成するシステムを開始した2008年にJ.Y. Parkが見つけた逸材で、以来ずっと大切に育ててきたコンポーザーのひとりである。今回も自分の作風や美学をわかってくれる身内の女性を付けて、TWICEの今の心境をより深く的確に表現しようと考えたのではないだろうか。
そのように推測する理由のひとつに『Eyes wide open』のリリース直前に発表されたジョンヨンの休養がある。所属事務所は彼女について、「心理的にスケジュール進行に対して大きな緊張と不安を抱えている。このことに関して本人およびメンバーと話し合い、現在の状態には専門的な追加の医療措置をはじめとする絶対的な安静と休息が必要と判断した」と発表している。ジョンヨンの件は「I CAN’T STOP ME」をはじめとする収録曲の制作準備中のメンバーに少なからず影響を与えたはずだ。
同曲の歌詞は、前述したように制御できない自分の心の動きを見事に表現しているが、さらに「輝かしい未来が来てもそれはいつか終わりがくるものだ」という不安感もそこはかとなく漂っているのが印象的である。このようなトーンの歌詞をK-POPのトップアイドルが歌うことはとてもめずらしく、ロングヒットすればK-POPの新しい潮流になる可能性もありそうだ。