ファイナンシャルプランナーで社会保険労務士の川部紀子です。2020年も残り2カ月を切りました。11月といえば年末調整の季節です。会社員の確定申告のようなもので、自分の所得税と住民税が決定する重要な作業です。毎年、個人の会計の締め日である大みそかが近付いてきたこの時期に行われます。
少し面倒に感じるかもしれませんが、最終作業は会社でやってくれるので、自営業者の確定申告よりはるかに簡単です。また、今年からパソコンやスマホによるオンライン提出ができるようになったので、対応している会社の方は案内があると思われます。
今回は、会社員の常識として、年末調整の意味合い、税金が決まる仕組みを理解しておきましょう。
収入と所得は別モノです
年末調整は、自分の税金、つまり所得税と住民税を確定させるための作業です。まずは税金が決まる仕組みを理解していきましょう。
年収を思い浮かべてください。源泉徴収票の左上に記載されてくるいちばん大きな数字ですね。これを「収入」(給与収入)といいます。この「収入」から、必要経費を差し引いた金額を「所得」といいます。実は収入と所得は違うものなんです。
「会社員は自営業者のような経費なんてないから、『収入=所得』かな?」と思いますよね。でも、通勤専用のバッグだったり、仕事に役立てるために買った本など、仕事をしているがゆえの支出だってあるはずです。そこで、会社員も一定額を経費のように差し引くことになっています。この額は、年収によって計算式が決まっており自動的に決まるため、領収書を集める必要はありません。自動的に決まる会社員の経費のようなもののことを「給与所得控除額」といいます。
収入 - 給与所得控除額 = 所得
税金が下がる法則とは?
所得が自動的に決まったら、次に税金が下がるポイントを反映させていきます。これが「所得控除」です。
所得から所得控除を差し引いたものを「課税所得」といいます。「課税所得」とは読んで字のごとく税金が課される所得なので、小さければ小さいほど税金が少なくなります。
つまり、所得控除の額が多ければ多いほど、差し引くものが多ければ多いほど課税所得が下がることに繋がるので、税金の面ではとてもありがたいものなのです。
所得 - 所得控除 = 課税所得
どんな種類の所得控除があるのかをいくつか確認していきます。
・基礎控除:名付けて自分控除。誰でも権利あり。
・配偶者控除:専業主婦(夫)やいわゆる扶養の範囲内の配偶者がいる。
・扶養控除:親や子(高校生・大学生)を養っている。
・障害者控除:自分や扶養親族が障害者。
・ひとり親控除:シングルで子育て中。
・雑損控除:災害や盗難にあった。(確定申告が必要)
・寄附金控除:ふるさと納税など対象となる寄附をした。(遅れると確定申告が必要)
・生命保険料控除:生命保険料を払った。
・地震保険料控除:地震保険料を払った。
・小規模企業共済等掛金控除:iDeCoの掛金を払った。
・社会保険料控除:健康保険料などを払った。
・医療費控除:多くの医療費(原則10万円)がかかった。(確定申告が必要)
他にも所得控除はありますが、例としてあげたものは、「大変そうですね/素晴らしいことですね(だから控除しますよ)」と認められそうな印象を受けませんか? 所得控除が多ければ多いほど、課税所得が下がる感覚がお分かりいただけたかと思います。
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