日本でも聖職者からの性暴力が表面化。宗教&スピリチュアルと性のおぞましい関係

文=山田ノジル
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日本にもある宗教☓性

 性的な儀式が独り歩きしている~という点は日本でもそっくりな流れがありましたね。性的な儀式を取り入れていた江戸時代の邪教「真言立川流」です(実は立川流から発生した謎の集団であり、正確にはこう呼ばず「彼の集団」とも言われているようですが、今回はそこは本題ではないので通称として真言立川流と呼ばせてもらいます)。

 ホワイト教授が説明していた「人を食う鬼人」はおそらく夜叉の一種である「ダキニ」のこと。真言立川流は、ダキニ信仰と古来日本の自然神である稲荷信仰が合体して広まったものである~という見解があるので、性的な部分がクローズアップされ魔改造されていったネオタントラ発生の流れとよく似ていますなあ。さらにタントラの儀式がグルの精液入り液体を飲んだり女性修行者の経血や排泄物を使ったように、真言立川流でも精液と経血を混ぜた「和合水」を数千回も骸骨に塗ったり集合で性交したりする修業があったいいます。

 真言立川流は今でもオカルト界やスピ界隈で語り継がれいて、「龍を味方につけた」とのたまうデューク更家も「今夜は真言立川流髑髏本尊法を少し使って祈願祝詞です」なるブログ記事をアップしています※。「祈願成就や御利益パワーが半端ないので、この度、お願いしました」。永遠の、中二病?

※立川流の本尊は髑髏ではなくあくまで「シャクティ(女性性の原理、エネルギーのようなもの)」(誤解なきよう、一応補足)

カルトと性暴力、人権侵害

 さらに、経典をトンデモ解釈し性交を儀式がごとく神聖視するという部分を見ると、初期の子宮系女子たちに広告塔として使われていた、膣に入れるパワーストーン「ジェムリンガ」もこの流れの中にいたのではなんて考えてしまいます。

 ジェムリンガを販売していた宝石商Sは、稲荷信仰のお話会や伏見稲荷の参拝ツアーなども行っていましたので、稲荷×ダキニが合体した立川流と高濃度で一致。パワーストーンを銀の金具で棒状につなげたジェムリンガは、さしずめ密教法具の三鈷杵(さんこしょ)? 命を交感し、宇宙につながる「まぐ愛」が人生の心理! 熱く潤う膣と子宮が命の源……そんな性と女体をとことん神聖視する思想(しかも一部商売に都合よく)を広める役割を課せられた子宮系女子たちは狐の巫女?

 宗教研究家、作家である藤巻一保の『真言立川流ー謎の邪教と鬼神ダキニ崇拝』(学研)では、立川流は真っ当な坊さんは手を出さない類のもので「民間で呪術などをやっていた下級の外法坊主」がやるようなもの~と説明していましたが、これもネオタントラからのジェムリンガと見事にマッチしていて、盛大に草生えました。

 ジェムリンガはさすがにニッチすぎて広範囲には広がりませんでしたが、「タントラヨガ」レベルになると、そこそこメジャーなメディアにも姿を現しているのがゾッとする。性の問題を手助けしてくれる機関が見つからないこの社会が、ネオタントラを生み出したのでしょうが、醜聞にまみれた世界であり危険な団体もたくさんあることが分かるドキュメンタリーでした。作中では真っ当な指導者も登場していますが、「当たり」を引ける人はそうそういないのでは。

 そして前出のレイチェルさんが指摘しているように、本来それぞれの判断で同意を決めてしかるべき部分を「尊敬を集める人物が、すべてを決める」ことや「組織で圧力をかける」点が大変にやっかい。

 カルト問題はたびたび「人権侵害」の問題点が叫ばれますが、まさにそれ。聖路加病院の事件においては、一般的に信頼が厚いであろう「病院勤務の聖職者」という立場を利用したのがさらに悪質です。被害者が相談した看護師の「チャプレン(施設で働く聖職者)がそんなことをするはずない」「相談窓口は設けていない」という対応がそれを表しています。

 加えて被害者は治療=命も握られているも同然の「患者」ですから、さらに苦しい立場でだったのでは。一方タントラのようなセクシャル物件の場合は「そんな場所に行った自分が悪い」という自己責任で片づけられる風潮もあり、これまた圧倒的に声があげにくいし、そこからのセカンドレイプ問題もあるでしょう。

 宗教やスピリチュアルと「体」が結びつくと、一気に危険な側面が色濃くなるという現象を、タントラや聖路加事件に見た思いです。

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