アツギ、タカラトミー、サントリー、キリン…炎上広告はどうすれば防げたのか

文=和久井香菜子
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「企業広報」は一般ユーザーと対等ではない

ーー昨年10月、日本赤十字社が掲示した、漫画『宇崎ちゃんはあそびたい!』コラボの献血ポスターへの批判が出た際は、かなり炎上して「漫画キャラクターにすぎない」「しっかり洋服を着ているので少しも性的ではない」といった反論も多く、論争が長く続きました。この炎上は、アツギの炎上とは種類が異なりますか?

【治部】『宇崎ちゃんはあそびたい!』の献血ポスターは、アツギのキャンペーンと構造が似ているようで違います。漫画やアニメ作品のファンに献血をしてもらおうという意図でコラボするのであれば、どのくらい効果があったのかはわかりませんが、そのターゲットには届いていたわけです。でも献血ルームには様々な人が訪れるので、そういったコラボのターゲット層ではない人が「この場に相応しくない」と思うポスターだったため、SNSで情報が拡散し、炎上しました。

 一方、アツギの場合はターゲットそのものを間違えていたのだと思います。

ーー2017年には、サントリービールの第三のビール『頂(いただき)』(現在は製造終了)がWEB限定PR動画を公開してその内容に批判が相次ぎ公開中止になりました。このPR動画は「絶頂うまい出張」と題し、北海道・東京・神奈川・愛知・大阪・福岡、6都市を舞台に、出張中の男性が現地で出会った女性と居酒屋や中華料理店で食事を楽しむ……というストーリーでした。カメラは男性の目線で、現地女性の役を演じるグラビアアイドルはセクシャルな服装で、頂を飲んで「コックゥ~ん!しちゃった…」「絶頂うみゃあ」等のキメ台詞を言うのですが、下ネタばかりでセクハラじみていると批判されたものです。これもアツギの炎上とは異なりますよね。

【治部】あのPR動画は、異性愛の男性だけをターゲットにしたものではありますが、出張したサラリーマンに「俺もこうだったらいいな」という夢を見せて、新商品を覚えてもらうという目的にはミートしています。しかしYouTube、Twitter、商品特設サイトにて公開され、ターゲットではない大勢の人たちの目に触れれば、やはり公共性の観点からNGだったわけです。

ーー2018年、キリンビバレッジの「午後ティー女子」という企画も炎上しました。いくつかのタイプの女性像をあげて揶揄し、消費者を馬鹿にしているのではないかと怒りの声が上がったものです。

【治部】午後ティー女子のイラストを描いたイラストレーターさんは、別のチャンネルではあのスタイルで支持されています。しかしキリンビバレッジの広告展開のやり方がダメで、お客さんをバカにしているような企画になってしまった。

 私が思うのは、大企業の中の人というのは今の日本においてエリート層とみなされているのですが、そのことに無自覚であるがゆえに炎上を引き起こしている側面もあるのではないかということです。大企業に勤める正社員というのはほんの一握りで、消費者は大企業のサラリーマンをすごいエリートだと思っている場合が多いのです。

 午後ティー女子に関して言えば、同じイラストレーターが同じ内容を女性誌に描いているならば、読者(消費者)は友達同士で内輪ネタを回している感覚で笑えると思います。でも同じことを企業広報がやると、主語が大きくなって「客をバカにした」ように感じられてしまうのです。

ーーサントリーにしろキリンにしろ、日本を代表する大企業ですから、尚更ですね。

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