ネット通販の拡大で生じる、生活習慣の激変と「新しい格差」

文=加谷珪一
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GettyImagesより

 新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけにネット通販の利用が急速に伸びている。ネット通販へのシフトは一時的なものではなく、不可逆的な動きである可能性が高い。

 ポスト・コロナ時代は、家にいる時間が長くなる分、在宅時間を有効活用できるのかで生活水準は大きく変わる。誰もが賃金の伸び悩みに直面する可能性が高く、年収アップで生活水準を上げるという選択肢はもはや現実的ではない。ネット通販やネットバンキングなどをフル活用し、時間のコストを最小限に出来る人が大きな利益を得ることになるだろう。

ネット通販へのシフトは不可逆的

 総務省の家計消費状況調査によると、今年5月にネット通販を利用する世帯の割合が初めて5割を超えた。一昨年は4割以下、昨年は4割ちょっとだったので、大幅に増えたことが分かる。説明するまでもなく、ネット通販の利用が増えた理由はコロナ危機による巣ごもりである。ネット通販の利用比率は年末にかけて上昇するのがいつものパターンなので、現時点ではさらに利用率が上がっている可能性が高い。

 ネット通販の利用者が増えていることは生活実感からも分かる。

 筆者の家庭は以前からアマゾンのヘビーユーザーだが、このところ、期日を指定した配達の場合、当日の夜遅くに荷物が到着することが増えている。標準で置き配を指定しているので、配達員も気兼ねなく遅い時間に配達できるという部分があるかもしれないが、それにしても配達時間がここまでズレ込むというのは、今までにはなかった現象である。巣ごもりの影響で配達する荷物が増え、時間がかかっていると考えられる。

 宅配大手の業績からも、配達が増えていることが分かる。宅配大手のヤマトホールディングスとSGホールディングスは、それぞれ今年度の業績見通しを上方修正している。ヤマトは最終利益の見通しについて従来予想の330億円から350億円に、佐川は、従来予想の625億円から675億円とした。アマゾンをはじめとするネット通販の利用が増え、取扱う荷物が増えたことが要因である。

 ネット通販が増えた直接的な原因はコロナ危機だが、感染が終息すれば、再び以前の状態に戻り、ネット通販の利用頻度が減るとは考えない方がよい。

 日本はネット通販やデリバリーの普及が遅かったので、たまたまコロナと重なってしまったが、米国や中国などネット先進国では、以前からネットへのシフトが急ピッチで進んでおり、多くのリアル店舗が消滅した。一連の動きは不可逆的な現象と考えた方がよく、数年後にコロナが完全終息した時には、日本におけるショッピングの常識はまるで違ったものになっているだろう。

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