
GettyImagesより
電通が、希望する従業員を一度退職させたうえで、新たに業務委託契約を結び個人事業主として働いてもらう制度「ライフシフトプラットフォーム(LIFE SHIFT PLATFORM)」を発表した。
電通では副業を禁止しているが、個人事業主になることで自由に副業や兼業ができるようになり、新しい「学び」「仕事」「仲間・チームづくり」の機会を創出。従業員個人の自己実現だけでなく、他社で培ったスキルや経験を自社に還元してもらう、といった狙いもあるそうだ。
しかしそれなら副業禁止ルールを緩和すれば良いだけのこと。一見すると、優秀な人材が会社員という枠組みを取り払っていっそう活躍し稼げるようになるための取り組みのようにも見えるが、平たく言えばリストラと同じではないだろうか。
資料には次のように説明がある。
<固定報酬は(株)電通に勤めていた時の給与をもとに算出され、段階的に減るように設計しています。メンバーが行った各業務から生まれた事業利益は、予め決められた割合で、出資者である(株)電通に還元されるとともにメンバーにもインセンティブ報酬として配分されます。個人に支払わせるインセンティブ報酬の割合は、段階的に引き上げられていきます>
契約後は電通勤務時の給与をベースにした固定報酬をもらえるとのことだが、年々固定報酬費は引き下げられ、インセンティブ報酬の割合が上がるようだ。必ず成果を出せると自信を持って、退職に踏み切る社員はどれほどいるのだろうか。
そしてこの制度の適用者は、営業や制作、間接部門など全職種の40代以上の社員約2800人だ。「ミドル社員の人材活用」を謳っているが、やはり年功序列で給与が高くなり経営を圧迫するミドル社員のリストラ・出向を目的としているように見えてしまう。
不可解なのは「競合他社との業務は禁止する」というルールだ。個人事業主であるにもかかわらず、実質的に電通グループとの仕事しかできない。つまり、ミドル世代が長く電通で培ったノウハウを、他社で活かすことは阻まれるわけである。
ネット上では「働かせ放題では」「労基法を守るのはもう諦めたのか」「電通が求めているのは新規事業創出でも新しい働き方でもなく社員の社会保障費削減と残業時間規制の形骸化でしょ」と批判の声が飛んでいる。
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