“嫁”は差別にあたる? 自治体ガイドラインでは「避けるべき表現」

文=雪代すみれ
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「靴下屋」Twitterより

 タイツや靴下を販売するメーカー「Tabio 靴下屋(以下、靴下屋)」のあるツイートがTwitter上で物議を醸した。

 11月2日、靴下屋のアカウントは下記のようにツイートした。

<ところで、明日は休日ですね!皆さんは何します!?
私は、嫁から「とりあえずこれを読め」と佐々木倫子先生の「Heaven?」を全巻渡されたので読みます>

 このツイートに対し、「“嫁”という言葉は不適切です」「“嫁”という言葉には差別的な意味があるのでやめたほうがいいですよ」といった指摘が複数寄せられた。靴下屋のアカウントは直接<ご指摘ありがとうございます>とリプライを返し、4日には指摘のあったツイートを引用しつつ、次の投稿をしている。

<こちらのツイートで、「妻」とするところを「嫁」としてしまい、不適切な表現となってしまいました。
ご指摘いただきまして誠にありがとうございます。
今後気をつけて参ります>

 一連の流れにTwitterでは、「公の場では妻・夫が適切ですよね」といった声がある一方で、「何が不適切なのかわからない」「またフェミかよ」「言葉狩り」とうんざりした声もあるなど賛否両論だ。

 11月12日の『グッとラック!』(TBS系)では、この件を「あるアパレルメーカー」のツイートとして紹介。なぜ「嫁」という表現が不適切なのか、番組では「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」事務局長である井田奈穂さんに話を聞いていた。

 井田さんは、そもそも「嫁」という言葉は「息子の妻」「息子の配偶者」という意味で長く使われており、<夫から妻に対して「うちの嫁が」というのは誤った使い方であるというふうに言われています>と説明。また、「女性蔑視につながる」とも指摘する。

<家の女と書きますよね。その昔家制度の中では外から入ってきた女、外から獲得されて家の中に入ってきた人のことを”嫁”として扱うという形だったんですね。非常に女性の地位が低くなった時代が家制度の時代だった>

 井田さんの説明に加え、番組では家制度では「嫁入り」が一般的であったこと、家制度では女性に家の財産を相続する権利が認められておらず、「嫁」という言葉が家制度を想起させるため、現代では使うべきではないとされていると解説された。

 当該ツイートについて井田さんは<企業の公式アカウントがSNSで発信する言葉にはやはりある程度は社会的責任を負っていると思うんですね>と言及。また、<1人でも差別だと声を上げた人がいたら 長い間(嫁と)言われて我慢して我慢して多くの人たちが声を上げなかった可能性がある、そこに気付いていただけたらなと思います>と述べていた。

「悪気はない」「公私で使い分けるべき」「差別的意図がなければいい」

 この問題についてスタジオでも議論されたが、ゲストのフリーアナウンサー・中村仁美氏は、<夫が蔑む意味合いで使っていないのがわかるので嫁と言われようと全然(気にしない)>と述べ、当該ツイートについては<文章全体からはパートナーを蔑んでいるイメージは伝わってこなかった>と話す。ちなみに中村氏の夫はさまぁ〜ずの大竹一樹だ。

 メインコメンテーターの田村淳氏は日頃から妻を「嫁さん」と呼んでおり、<一人でも差別だと感じる人がいるんだったら差別になるんだろう><でもそんなつもりで使ってなかったな、全然悪気もないし、なんだったら敬っている感もあったし>と見解を述べた。

 MCの立川志らく氏は、公私で使い分けが必要だと指摘。ただ、悪意がないのであれば<そんな目くじらたてることなのかな>とも。

志らく氏<先ほどの女性の方(井田さん)は企業とか公式の場所でいうのはどうかと、個人が言うぶんにはなんと呼んでもかまわないって言っているので、我々が差別的意識がないならば別に嫁と言おうが、カミさんと呼ぼうが、かかあと呼ぼうがなんだっていいわけですよ>

 中村仁美氏も公私の使い分けは意識しているようで、夫のことを友人と話すときには「旦那さん」と言っているものの、コラムでは必ず夫と書くようにしているそうだ。自身はパートナーのことを「妻」と呼んでいるという国山ハセンアナは<言葉は時代の変容とともに変わっていくべきでじゃないですか>と、言葉の移り変わりに肯定的。

 東大卒クイズ王のタレント・伊沢拓司氏は<一人でも差別だと思ったら差別というのは、そこに差別があるってことは間違いないけれども、一人でも差別だと思ったからその行為全てが差別ということとはまた違う><差別と感じられる方がいることは知っておくべきこと>とコメントした。

 こうしたそれぞれの意見交換を経て、番組では、北海道・函館市の「情報の発信における表現ガイドライン」を紹介。このガイドラインは、その名の通り情報を発信する際のふさわしい表現が記載されたもので、「嫁・女房・家内・奥さん・カミさん」ではなく「妻・配偶者・パートナー」、「主人・旦那・亭主」ではなく、「夫・配偶者・パートナー」といった表現が望ましいとされている。また舅や姑も「夫・妻の父・母」といった呼び方が望ましいとのことだ。

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