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実体経済離れの株高更新
IMF(国際通貨基金)は今年6月下旬に提出した「国際金融安定報告書」のなかで、金融経済と実体経済が大きく乖離している、と言い、主要国の株価が実態経済と離れて異様に高くなっていることに警告を発しました。当時、米国株はコロナで落ち込んだ3月の底からわずか3カ月で既往ピークからの落ち込み分の85%を回復していました。
今年の世界経済が大幅なマイナス成長と予想される中で、株価だけがこれほど強いことにIMFが強い警戒感を示したのですが、その後米国の株価はさらに上昇し、あっという間にコロナ前のピークを凌駕して、最高値を更新しました。その流れに乗って、日本株も日経平均株価が11月10日にはついに2万5千円を回復、29年ぶりの高値を記録しました。
米国の大統領選挙ではバイデン前副大統領が獲得選挙人数で一旦勝利し、彼の積極的な財政政策と、コロナの感染抑制姿勢に期待が集まりました。さらにファイザー社の新型コロナワクチンが90%超の有効性を確認したと報じられたことで、市場を襲っていたコロナの感染不安が大きく後退しました。これが株価をさらに押し上げました。これまでコロナの影響を強く受けると見られていた観光、レジャー関連の株を中心に買い戻しが入りました。
コロナで国債市場の存在感が薄れた
株は過去の経済ではなく、今後の経済や業績を先取りして動くものですが、それにしても米国の株式時価総額は米国GDPの190%を超えています。この比率は「ハフェット指数」と呼ばれますが、これが警戒ラインの100%を大きく超えてから、高値警戒ランプが点灯したままです。日本でも東証1部の株式時価総額は約650兆円となり、GDPの120%を超えています。
市場でよく株価の割高割安の判断基準として使われるPER(株価収益率)は、11月10日時点で米国ダウが29倍、日経平均が23倍と、いずれも「割高」を示唆しています。それでも株が買い続けられる背景には、投資対象として株に対抗するライバルがいなくなってしまったことがあります。
日本の投資市場において最大のものは国債市場です。これは約1000兆円規模で、市場の横綱と言えます。これに次ぐ市場が株式市場で、東証1部で約650兆円となります。この両者がライバル関係にあったのですが、このうち、「横綱」の日本国債市場で金利がマイナスないしゼロとなって、ライバルの株式に太刀打ちできなくなり、ほぼ「休場」状態にあります。