『私たちが震えた 少女ホラー漫画』恐怖の描写に見え隠れする「愛され」「抑圧」という呪い

文=山田ノジル
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いまのスピ界隈にも通じる様相

 超常的な存在に目をつけられるという設定は、同書紹介作品の中では「百鬼夜行抄」(今市子)や、「すっくと狐」(吉川うたた)もお仲間でしょう。異類婚姻譚などの古典も感じさせつつ、呪術的な要素が物語中にちりばめられているので、こちらは「呪われ女子(もしくは男子)」というより双方向の呪い合戦かもしれません。

 前者の主人公は、祖父の代から龍の姿をした式神を従え、後者のヒロインは妖魔のブースターとしてオカルトバトルを展開。これらは少女ホラー漫画の定番である吸血鬼ものや魔女ものとあわせ、カルト的なものに憧れを覚える中二病欲求も満たしてくれたのではないでしょうか。

 「選ばれしもの」の物語では、異能者の責任や孤独、マイノリティへの視線もきっちり描かれていますので、オカルトの世界を楽しみながらも、これまた学びがたくさんちりばめられていました。「龍がついている!」とか「宇宙からのメッセージ」とかを語り、スピリチュアル界隈で無責任に人を惑わすなんちゃってヒーラーもしくはカウンセラーたちは、同書のガイドを参考に、これらの名作から異能者のあるべき姿を学び治してはどうでしょうかね。

 表紙のイラストは、シュチュエーションホラーの女王と呼ばれる関よしみ。私は小学生当時『なかよし』夏の増刊号で知り、一発で虜になりました。そのときの作品は、アホ科学者のうっかりミスで人喰い蜘蛛に街が襲われる、生物パニックホラーさながらの「赤い悪魔の子守歌」でした。幼い兄弟の白骨が草むらに転がっているシーン、人知れず死んでいたという感じが、蜘蛛に食われるより怖かったなあ。

 当時の作風は少女漫画らしく、ちょっぴりリリカルな描写もある可憐なタッチだったのに、後年チェックしたらいつの間にか血しぶき内臓眼球をまき散らす、スプラッタ系な作風でハジけていたのには大ウケしました。もし切株※漫画検定なんてものがあったら、間違いなく指定課題図書となるでしょう。

(※人体破壊描写は、一部で「切り株」と呼ばれている。)

読みつがれてほしい少女ホラー

 関よしみ作品の見どころは、人体破壊描写以上に「狂った群衆」です。デマや極限状態で本性がむき出しになり、同調圧力なども相まって集団で破滅していく。社会に蔓延する呪いに感染したといった趣です。ですからどの単行本も、カルト描写祭りが楽しめることでしょう。頭のおかしい強欲権力者に支配された街、バッドエンドフラグが立ちまくりのカルト教団、「愛」という名目で殺し合う賞金稼ぎ、未知のウイルスに感染した人々の暴走etc.。

 一時期、関よしみ漫画全コンプを目指していた私は、昨今のスピリチュアル界で素人信者たちがド派手な衣装に身を包み、お金を払ってステージで自己表現する馬鹿騒ぎイベントなどを見ても、どこか既視感を覚えます。あ、これ関よしみっぽい! と。ホラー漫画は、リアルで謎物件に遭遇した際の、耐性としても役立つようですよ。

 出自だったり、運悪くたまたま遭遇したり、自らよからぬものを呼び寄せてしまったりと、物語中ヒロインたちが遭遇する呪いは多種多様。この本で紹介されている漫画のリアルタイム読者はもうとっくに大人になっていますが、ぜひ今の時代の子どもたちにも読み継いでいただき「世の中にはこんなにヤベー大人も、支配しようとしてくる言説=呪いもたくさんあるんやで」ということを遠巻きに感じてもらいたいものです。

 そのための参考図書としても、ぜひ本著を活用させていただきましょう。そして皆がヒロインたちのようなラッキーの連続で(だいたい1度は呪われてるけど)、おかしなもの・怖いものから逃げきれるといいですね。

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