新型コロナウイルスの新規感染者数は12月21日現在、全国で2500〜3000人が確認されており、過去最多の水準が続いている。また、12月8日に発表された7-9月期の実質GDP(季節調整値)は前期比5.3%とプラス成長であったが、4-6月期の前期比7.9%の反動に過ぎず、いまだ厳しい状況が続いている。
その一方で、世界的に株高が起き、日銀短観の景況感も改善しつつあるのも確かだ。コロナ禍のいま、日本経済でいったい何が起こっているのか、新型コロナウイルスによる経済への影響や必要な対策、そして2021年以降の経済の見込みについて、明治大学准教授の飯田泰之氏にお話を伺った。
コロナ収束後はビジネスチャンスが生まれる
――2020年の経済について、特に新型コロナウイルスが与えた経済への影響と今後の展望についてお話をお伺いしたいと思っています。今年を振り返って、コロナよる経済への影響をどのように見ていますか?
飯田 今回のコロナによって、私たちが日常的に需要していたものの多くは「不要不急」のものであったことに気がついてしまった一年だったと考えています。そして「不要不急」のものこそ現代経済にとって重要なのだということにも。
3月の時点では結構な数のエコノミストが、コロナによって物流や生産が滞り、サプライチェーンが壊滅するのではないかと心配していました。スペイン風邪など歴史上のパンデミックでは、物流の凍結など供給サイドで問題が起きてきたんです。
今回はどちらかというと供給サイドは比較的健全に保たれていた。おそらく新型コロナウイルスが30年前に流行していたら、このようにはならなかったでしょう。今は会社に行かなくてもリモートワークができ、事務的な手続きや会議もクラウドサービスで行えるようになっている。工場や物流ではリアルな人間も動きますが、無人化されているものも多く、いわゆる「密」にはならない。業種差はあるものの、供給サイドは壊滅的な状況にはなっていないわけです。
問題は需要サイドにあります。統計をみると、アパレルは製造業の中でも大きなダメージを受けています。化粧品系の産業も、日本でコロナの感染が拡大してから消費が大幅に減少し、回復も鈍い。おそらく外に出る機会が失われたことで「別に化粧しなくてもいいじゃん」と気がついたんだと思います。
先進国では、需要活動のほとんどが生命維持に不必要なものだった。私たちは2020年にこのことに改めて気がついてしまったんです。疫学的な話は専門家ではないので私にはわかりませんが、おそらく来年には何らかの形で収束に向かっていくでしょう。そのとき、私たちの経済活動はコロナ前と後でガラッと変わる可能性が大きいと思います。
ーー今後、コロナ以前のような消費が行われなくなるということでしょうか?
飯田 消費するものやサービス、場所が変わるでしょう。
例えば特定サービス産業動態統計調査をみると、フィットネスクラブとパチンコは緊急事態宣言が解除されてから、他のサービス業に比べても回復するスピードが非常に遅いんです。身に覚えがある人も多いと思いますが、一度やめてしまうと再びフィットネスクラブに通い直すのはなかなか難しいですよね。そのうち解約してしまって別のことにお金を使うようになっていく。
パチンコも同様です。通うことが習慣化されていた人の中には、その習慣が途切れた途端に「もういいや」となる人がいる。ただ突然倹約家になるというわけではなく、パチンコに費やしていたお金をアプリゲームに使うなど、消費するものが変わっていると予想されます。
このようにコロナ収束後は、需要の大変動が起き、業界の地図が変わっていく。新たなビジネスにとってはまさにチャンスであると同時に、従来型の経営にとっては危機の時期を迎えることになります。