米大統領選「バイデンの勝利」を、子ども投票が正確に予想できた理由

文=加谷珪一
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GettyImagesより

 米大統領選挙は激戦の末、民主党のバイデン候補が勝利を確実にした。共和党のトランプ大統領は、いまだに選挙結果を受け入れないという異常事態が続いているが、日本を含む各国は、バイデン氏を次期大統領として外交をスタートしており、外堀はすべて埋められた状態にある。

 今回の選挙では、情報がかなり錯綜したが、そのような中にあって、事前にバイデン氏の勝利を正確に予想していた人たちがいる。

報道は情緒が入り込むのでアテにならない

 今回の選挙戦では、当初、バイデン氏が有利とされたが、トランプ氏が巻き返しを図り、各州はかなりの激戦となった。開票作業終了直後は、大票田であるフロリダとテキサスでトランプ氏が勝利したことから、トランプ氏再選の可能性が高まったものの、共和党の支持が圧倒的とされたアリゾナ州でもバイデン氏が優勢となり、ペンシルバニアでも票を伸ばしたことから、最終的には過半数を大きく上回った。

 トランプ氏は敗北を認めず、再集計の要請や訴訟などを行うと同時に大規模な不正があった主張しているが、証拠は一切示しておらず、国際社会はトランプ氏の言動について無視しつつある。就任式まではトランプ氏が大統領なので、このまま敗北を認めなければ、どのような事態となるのかはまったく予想できない。だが、一般的に考えた場合、トランプ氏に勝ち目はなく、どこかのタイミングで事実上、敗北を認め、大統領の座から退かざるを得ないだろう。

 今回は状況が二転三転したのちバイデン氏が勝利したが、メディアの反応は冷静さを欠いたものが多かった。米国はもともと保守系とリベラル系のメディアがあり、論調が異なるのはいつものことだが、今回はその傾向が特に顕著だったといってよいだろう。

 日本のメディアは、米国の大統領選挙という外国の話題であることから、従来は中立的な報道を行うというのが不文律だった。だが、今回の選挙では一部メディアや専門家がトランプ氏の勝利を強く主張するなど、状況が大きく変わっている。そもそも外国の大統領選挙に対して支持も不支持もないはずであり、どちらが勝てば日本にどのような影響が及ぶのかというところが最大の関心事のはずだが、日本のメディアは、年々、情緒が優先されるようになっている。

 つまり、米国も日本も偏った情報ばかりが行き交う選挙戦だったわけだが、このような状況にあっても、米国の子どもたち、賭けに興じる人たち、そして投資家たちはかなり前からバイデン氏の勝利を正確に予想していた。

子どもによる模擬選挙や賭けサイトの結果はたいてい正しい

 米国には教育出版社が毎年、行っている「児童・生徒による大統領選挙」というイベントがある。これは、自ら参加を希望した幼稚園から高校生の児童生徒が模擬選挙を実施するというものである。同イベントは1940年から行われているが、的中率は極めて高く、実際の選挙結果と結果が違ったのはわずか3回しかない。

 ちなみにその3回とは、ハリー・トルーマン氏とトーマス・デューイ氏が争いトルーマン氏が勝利した1948年の大統領選挙、ジョン・F・ケネディ氏とリチャード・ニクソン氏が争いケネディ氏が勝利した1960年の選挙、そして、トランプ氏とヒラリー・クリント氏が争った前回(2016年)の選挙である。

 1948年の選挙は米国の歴史の中でも最大の番狂わせと言われた選挙だった。1960年の大統領選も不正投票が噂されるなど相当な混乱があり、トランプ氏の登場も予想できない事態だった。子ども選挙がこれら3つの選挙で間違ったのは当然といえば当然であり、むしろ、この3回以外のすべての選挙で正確に当落を予想していたことの方が驚きといってよいだろう。

 一方、賭けに興じる人たちの予想も正確だった。著名な賭けサイトであるプレディクトイットでは、5月の段階ではバイデン氏の方がオッズが高くなっていたが(つまりトランプ氏が勝利すると予想されていた)、6月に入って両者は逆転、投票日の一瞬だけ再びバイデン氏のオッズが上昇したものの、それ以外は終始一貫してバイデン氏のオッズは低く推移してきた。

 株式市場も同じである。バイデン氏は大型の景気対策を公約として掲げており、バイデン氏が当選すれば株価が上昇すると予想する投資家が多かった。投票日が近づくにつれて、バイデン氏の勝利を見越した買いが入り、ダウ平均株価は顕著に上昇した。

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