米大統領選「バイデンの勝利」を、子ども投票が正確に予想できた理由

文=加谷珪一
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正しい結論を導き出す「集合知」の原理

 では、子ども投票や選挙やオッズ、そして株式市場はなぜ選挙結果を正確に予想できたのだろうか。それには明確な理由がある。

 情報の世界には集合知という概念が存在する。集合知というのは、多くの人の見解を集約するとたいていの場合、正しい結論が得られることを意味する言葉である。簡単に言ってしまえば「皆が言っていることは正しい」ということになるだろう。だがこの集合知が成立するためには、意見の多様性と独立性が担保されていることが絶対条件になる。

 いくら皆の意見であっても、それが一つの情報源から得た情報がベースになっている場合や、同調圧力がある中で形成された意見では正しい結論は導き出せない。各人が、独自の情報をもとに考えた意見を多数組み合わせていくと、不思議なことに正しい結論が導き出せるというのが、この集合知の原理である。

 上記の3つのケースではこの集合知の原理が当てはまっていると考えられる。

 子どもは大人と比較して、政治家に対して強いイメージを持っていない。特に小学生などの場合、バイデン氏とトランプ氏の主張についてよく理解しているとは思えない。だが、そうであるが故に大人たちの会話や報道などを先入観なしに取り込むことができる。余分な情報が入らない分、子どもはそれぞれが独自の方法で情報を処理し、自身の見解として投票を行っており、結果として正しい結論を導き出している。

 オッズや株式市場で集合知が成立しやすいというのは、実は以前から知られていた事実である。

 1986年に発生したスペースシャトル「チャレンジャー号」の事故では、原因がまったく特定されていない事故直後の段階から、ガス漏れを起こしたリングを製造している会社の株だけが下落していた。このリングが問題だと明らかになった時には、株価はすでに大幅に下がっていた。

自身のお金を投じることの意味

 株式市場と賭場はまったく違う所だが、自分の貴重なお金をリスクに晒しているという点では同じである。人というのは、自身のお金がかかると本気を出すものである。今回の選挙で「トランプ氏が絶対に勝利する」「バイデン氏が勝つべきだ」と声高に主張している人の大半は、選挙結果で自身の資産が左右されない人たちである。

 自身のお金には何の関係もないからこそ、勇ましく主義主張を喧伝できる。しかし、こうした人たちも、ひとたび自分のお金が選挙結果で失われるかもしれないとなると、途端に顔付きが変わるはずだ。本当のところどちらが勝つのか冷静に情報を分析し、慎重に結論を導き出すだろう。

 これは一般的な投資についてもあてはまる。世の中では自分で投資をしていないにもかかわらず、「○×の銘柄が上がる」などと力強く主張している専門家がいるが、これは自分の利益とは無関係であるがゆえにこうした勇ましい主張ができる。

 筆者はこれまで20数年にわたって株式投資を続け、資産は億単位になっているが、今でも、わずか100万円を追加投資するだけでかなり逡巡する。周囲の声に惑わされないよう、徹底的に事実だけ見ようと努力するものだ。自身のお金を投じるというのはそういうことであり、それは賭けであっても同じである。

 今回の選挙において、子どもと賭けに興じる人が結果を正しく予想できたというのは、一部の人には不都合な真実かもしれないが、私たちに多くの示唆を与えてくれる。

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