入管収容施設で糞尿をまき散らし逮捕された被収容者。彼が訴えようとしたこと

文=織田朝日
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Getty Imagesより

 茨城県の東日本入国管理センター(牛久入管)の収容施設には、約100名の在留資格のない外国人が長期にわたり収容され続けている。

 イラン人のヤドラさんは収容されて4年4カ月以上も外に出ることなく、収容施設内での生活を強いられている。

 そんな彼が、2020年9月1日に医務室の待合室で自分の糞尿をビニールの袋に入れ、まき散らすという事件を起こし懲罰房に約5日間入れられた。2カ月以上過ぎた11月10日には建造物損壊の罪で逮捕されている。ちなみに、清掃費用は44万2156円かかったと発表された。

 牛久入管の総務課はこの件について、「彼のせいで、部屋は3日も使えなかったんですよ。他の被収容者だって診療することができなかったのです。機材にも(糞尿が)かかってしまいました。もう、(現場を)想像するだけでも嫌です!」と憤りを隠せない様子である。

 彼は、なぜこのような犯行に及んでしまったのだろうか。逮捕される前日、ヤドラさんが支援者にあてて書いた手紙がある。

「ここでの生活を一日増しに酷くなっています。現時点で4年4ヵ月ここに閉じ込められ精神的にも肉体的にも色々追い詰められて、毎日辛いです。
 新聞やテレビを見ると社会ではペットや野生動物の虐待や苛め等に社会の皆様が関心をもって、問題にしたり、採り上げられて裁判所や警察署に訴えられていますけど、ここで収容されている難民達がどんなに酷い目にあっても虐待されていることもどうにもならないです、ここの内で不正を行っていることを警察署に訴えたいです」
(本人の文章なので誤字脱字はあるが原文ママで掲載した)

 ヤドラさんは、今年の春に赴任してきた常勤医の男性(35~40代くらい)に執拗にいじめを受けていたと、支援者たちに不満を訴えていた。

 実は、収容所内では職員はおろか、医者も准看護師も名前を一切明かすことはない。その常勤医はヤドラさん以外の被収容者からも評判が悪く、とても医者とは思えない暴言を吐いたり、ひどい行動をとることから、「医者ではなく、入管の職員ではないだろうか」と疑いをもたれてすらいる。

 総務課は、「彼は紛れもなく医師免許を持っているし、(被収容者への)イジメはやっていないと本人は言っています」と説明するが、ヤドラさんは次のように具体的な被害を証言した。

「収容された後、3年前から当時の医者にあなたは精神的な病気だと言われていました。しかし特に治療を受けさせてもらえることはなかったので、自分では病名すら分かりません。取り敢えず睡眠薬、精神安定剤、頭痛薬などを服用していました。
 それがあの常勤医が来てからというもの、薬を減らされてしまい苦しかったです。私はドライアイなので、外部の病院から目薬を処方されています。しかし常勤医はそれすらも私から取り上げたのです」

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