ナチス占領下にあるフランスの小さな村がユダヤ人児童を救った。映画『アーニャは、きっと来る』監督インタビュー

文=此花わか
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(c) Goldfinch Family Films Limited 2019

 『アーニャは、きっと来る』の原作はレスカンという実在の村で本当に起きた出来事にインスパイアされて、“偶然”に生まれた小説だ。30数年前、原作者のモーパーゴはバカンスでレスカンを訪れた。モーパーゴ夫妻が村で寛いでいるときに、村の少女がモーパーゴにサインをねだってきた。そして、モーパーゴは少女の父親と歓談するうちに、ナチス占領下のこの村に住むひとりの女性がユダヤ人の子供たちを納屋に匿い、羊飼いが通る山道を通ってスペインへ彼らを逃がしていたという実話を、“偶然”にも聞いたという。この女性が未亡人オルカーダのモチーフとなった。

 劇中に登場する熊やナチに撃たれる村人の話も少し脚色されてはいるが、実際に村で起こった事件であり、その村人が撃たれた場所には今も小さな慰霊塔が建っているそうだ。モーパーゴ本人曰く、この小説はフィクションといえど、村の“記憶”を語った真実なのである。

ビジネスを超えてレスカンの“記憶”こだわった理由

 モーパーゴとレスカンのこの“偶然”の出会いについて筆者がベン・クックソン監督に聞くと、彼は「モーパーゴの原作が語る“記憶”を忠実に表現するには、物語のDNAを映画に盛り込む必要があった」と言い、こんなエピソードを教えてくれた。

 映画化のプロジェクトがクックソン監督に持ち込まれた当初、プロデューサーたちはニュージーランドかカナダで撮影することを計画していた。なぜなら、これらの国は映画制作に対する税制優遇があるし、撮影にも慣れている上に英語圏だから多国籍のプロダクションチームにとって仕事がやりやすい。ビジネス面でも非常に有利なロケーションだが、監督は原作と脚本を読んで以来、どうしてもレスカンを自分自身の目で見たくなったという。

 クックソン監督自身もパリ在住でフランス語に堪能なことから、4日間の取材だけという約束でレスカンを訪れた。すると、たまたま宿泊したAirbnbのオーナーは、「私の亡くなった父も羊飼いだったんですよ」と古い写真アルバムを監督に見せながら父親から聞いた、ナチス時代の話をしてくれたそうだ。この時、物語のDNAはレスカンの村そのものだと確信した監督。監督はすぐにプロデューサーを説得してレスカンをロケ地に使うことにしたのだ。

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