彼らの来日時に中止発表がなかったことも、私が入手した情報に符合していた。今までに1兆円以上の税金を投入し、経済への起爆剤にと準備してきた五輪開催を簡単に諦められない日本政府と組織委の思惑が、中止発表をためらわせ、先延ばしさせているのだ。
だが国内でも急速に感染者は増加しており、早くも医療崩壊の懸念が出始めている。こんな状況で五輪などやっている場合か、と多くの国民からも中止を望む声が上がっている。
そもそも五輪招致の最大の目的であったインバウンド効果は、既にコロナによって完全に消滅している。ワクチンはようやく完成に近づいているが、来夏、数百万人の観光客を日本に呼ぶには、到底間に合わない。世論の後ろ盾もなく、観光客も来られない。さらに、約4割の種目で、いまだに予選が行われていない。つまり選手も来られない。あらゆる指標が、五輪中止を指し示しているのだ。
だが日本政府は、「WITHコロナ五輪」などという世迷い言をキャッチフレーズに、徹底した感染予防措置をすれば五輪が開催出来るようなプロパガンダを展開している。しかし、そのためには、さらに莫大な追加予算と人的資源(医療従事者)の確保が必要であるから、所詮、絵に描いた餅に過ぎない。
招致時に約7千億円としていた開催費は3兆円を超えると言われ、そのうち組織委が自前で調達しているのは約6000億円程度に過ぎない。つまり、大半は国民の税金なのだ。それなのに、そこにさらにコロナ対策費が青天井で計上されるなど、許されるはずがない。そんなカネがあるのなら、国内のコロナ対策にまわすべきなのだ。金食い虫の五輪は、即刻中止すべきである。
国内メディアは今こそ、そのことを国民にきちんと伝えるべきだ。今それをせず、相も変わらぬ大政翼賛報道を続けるなら、報道機関としての信頼を決定的に失うだろう。
(本間龍)