劇場版『鬼滅の刃』大ヒットでも苦しい映画館 潤うのはシネコンのみで二極化

文=中崎亜衣
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©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

 映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の10月16日封切りから45日間の興行収入が、275億円を突破。『タイタニック』の記録を超え、歴代2位となりました。観客動員数も2053万人に達しており、子どもたちの冬休みとなる年末には300億の大台を突破すると予想されます。社会現象と化した『鬼滅の刃』が興行収入歴代1位のジブリ作品『千と千尋の神隠し』(308億円)を追い抜くのも時間の問題かもしれません。

 新型コロナウイルスの世界的な蔓延によって失速していた映画業界の“救世主”のようにも見られている『鬼滅の刃』ですが、実は大ヒットの恩恵を受けられるのは、スクリーンを多く持ち、1日に数十回上映することが可能な大手シネコンが中心で、そうでない映画館は今後も厳しい運営が続くことが予想されています。

2019年度の映画興行収入は過去最高だったものの…

 日本映画産業統計(一般社団法人日本映画製作者連盟調べ)によると、『天気の子』や『アナと雪の女王2』などのヒット作に恵まれた2019年度は、日本で公開された映画の日本で公開された映画の興行収入は過去最高となる2611億8000万円(前年比17.4%増)を記録。入場者数も1億9491万人(同15.2%増)を記録しています。

 2019年度の収入高合計は3224億2200万円(前年度比8.8%増)。恵まれた1年だったように見えますが、しかし、2015年度から2019年度決算まで5期連続で収入高が判明している映画館運営業者97社中、収入高が「増収」したのは34社(構成比35.4%)で、「減収」が18社(同18.8%)、「横ばい」が44社(同45.8%)。ヒット作が続いた2019年度にあっても、2割近くの業者は売上が下がり、半数近くの業者は横ばいにとどまっていたことになります。

 2019年度の収入高上位トップを見ると、1位のTOHOシネマズ(株)をはじめ、多数のスクリーンを抱える大手シネコンが上位5位独占。上位5社の2019年度の収入高合計は2465億4300万円で、映画館運営業者収入全体の76.5%を占めています。

 一方で、映画館運営業者97社を収入高の規模別で見ていくと、最も多いのは「1億円未満」46社(構成比47.4%)で、次いで「1億~10億円未満」31社(同32.0%)となります。

 映画館運営業者全体では、収入高10億円未満の“ミニシアター系”“単館系”と呼ばれる小規模な運営業者の割合が8割近くを占めており、収入高50億円以上の大手・中堅の運営業者は8社(同8.2%)なのです。

 『アナ雪』も『天気の子』も『鬼滅の刃』も、シネコン上映が中心である以上、いくらヒットしても小規模事業者には回らず、ミニシアターは苦しい状態でしょう。収入高50億円以上の大手・中堅シネコン運営業者8社の業績は、7社が「増収」1社が「横ばい」と好調ですが、収入高10億円未満の小規模運営業者76社では、40社(構成比52.6%)が「横ばい」、17社(同22.4%)が「減収」と、苦戦を強いられています。

 コロナ前でヒット作に恵まれていた2019年度の時点ですら、大手・中堅シネコン運営業者は好調、小規模運営業者は苦戦傾向と、二極化の実態が浮き彫りになりました。

 今年は新型コロナウイルスの影響で、休館や公開延期、座席数制限など運営面での制約が多く資本力がありスクリーン数の多い大手シネコンは『鬼滅の刃』ヒットによる恩恵はもちろん、「4DX」「ScreenX」「IMAXレーザー」などの最先端設備、応援上映、アイドルのライブビューイングなどで顧客獲得につなげてきました。他方、小資本で、芸術的側面の濃い小規模運営業者は、舞台挨拶やトークイベントなど顧客獲得につながる施策にも限界があります。

 全国的に新型コロナウイルス新規感染者が再び増加している中、小規模運営業者を取り巻く状況はますます厳しくなり、場合によっては廃業や倒産が増加するのではないかと見られています。

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