ドラマ『保健教師アン・ウニョン』が炙り出す韓国社会の問題点

文=gojo
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 保健教師(保健室の先生)のアン・ウニョンは、子どもの頃から他人には見えないものが見える特別な力をもっており、その能力をふるって勤務先の高校を覆う邪悪な存在を人知れず退治している。つまりは悪を倒す女ヒーローなのだが、その姿は、冴えない白衣と化粧っ気のない、簡単に言えば華のないビジュアルで、そんな自分の運命を「クソ食らえ」と悪態で迎えるような正義の味方だ。ハリウッド映画で見かける男性顔負けの完全無欠なスーパーウーマン的戦う女性像とは、だいぶ違っている。

 そもそも悪霊退治に使う武器がBB弾やおもちゃの剣だし、ドラマ内で描かれる「邪悪な存在」も、やたらとカラフルでポップでキッチュ。悪者というよりダサ可愛いキャラクターのようで、これまでわたしたちが敵だの戦いだのという言葉から想像してきたものを見事に裏切ってくる。

 その反面、邪悪なものに支配された高校生たちの嫌な笑顔、変な汗、罵りの言葉などは見てて心底ゾッとするほど気持ちが悪く、事態の深刻さがこれでもかと伝わってくるリアルさがある。

 そしてウニョンのパートナーとなる漢文担当教師のホン・インピョは、バイク事故の後遺症から足に障害を抱えており、走ったり運動したり出来ない、いわゆる「男らしさ」とは程遠い男性だったりする(そしてこちらもビジュアル的には相当地味)。

 しかしとある理由からそんなインピョはだんだんとウニョンの悪霊退治にとって欠かせない大切な存在になっていき、単純な恋愛感情だけではない関係で結ばれたこのふたりが勤務先の高校とそこに通う子どもたちを守る、つまりは世界を救う。

 その転覆こそが、原作、脚本、演出、プロデューサー、制作会社代表、そして主演俳優(ウニョン役のチョン・ユミは映画『82年生まれ キム・ジヨン』の主演でもある)までが皆女性という環境で作られたドラマであることの意味、そしてそれを世界に向けて実現してみせる圧倒的な勢い。それが現在の韓国ドラマの大きな大きな魅力のひとつになっているのだろうと、強く感じた。

 最終話の終わり方、まだ描かれていない原作のエピソードなど(アヒルたち!)から察するに、必ずシーズン2が作られそうな気配なので、今から楽しみで仕方ない(劇中音楽もとてもかっこいいので注目してほしい)。

 アン・ウニョンは、色々愚痴も言うけれど、最終的に絶対的に、優しい。自分が子どもを守る存在であるという運命からは逃げない。大人として当たり前のこと=未成年を保護する、という善意を疑わない、悪霊が見えるという特殊能力を持った普通の保健室の先生なのだ。

(gojo)

『保健教師アン・ウニョン』
Netflixで独占配信中
あらすじ:物語の舞台はとある高校。主人公のアン・ウニョンは一見どこにでもいる普通の保健教師だが、実は彼女には他の人には見えない、ゼリー状の悪霊のようなものが見えるという特殊能力があり、おもちゃの剣と銃を手にしながら日々そのゼリー状のかたまりと対峙している。

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