ファイナンシャルプランナーで社会保険労務士の川部紀子です。
新型コロナウイルス第3波の影響で再び休業に見舞われた方も少なくないはずです。
感染者が発生した場合など保健所からの指示等ではなく雇い主の判断で従業員を休ませた場合、平均賃金の6割以上の「休業手当」を支払わなければなりません。コロナ禍の現在、多くの雇い主は従業員に休業手当を支払い、国から助成金(雇用調整助成金)を受け取っています。
しかし、休業手当を支払う体力もなくなってしまった雇い主もいるかもしれません。また何らかの事情で休業手当を受け取っていない従業員もいるでしょう。その場合、従業員自身が国から直接お金(新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金)を受け取ることができる可能性があります。今回はこの制度を紹介していきます。
2つの要件を満たした場合は手続きを
【要件】
冒頭に書いた通りですが、正式には次の2つの文言に当てはまった場合、受給の可能性があります。
① 令和2年4月1日から12月31日までの間に、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた中小事業主に雇用される労働者
② その休業に対する賃金(休業手当)を受けることができない方
【金額】
受け取ることができる金額は、休業前賃金の8割(日額上限11,000円)です。
【注意点】
労働者自ら申請するものではありますが、休業の事実や賃金を受け取っていない証明をするため、雇い主に「支給要件確認書」の記載を依頼する必要があります。この書類が申請の肝であり最重要です。
雇い主に金銭面の負担はありませんし記載に応じない理由はあまり考えられません。また、記載を依頼した従業員を不当に扱うことは法律上問題があります。
どうしても雇い主が記載に応じない場合は、その旨を記載し申請することは可能ですが、後日労働局から雇い主に確認や協力依頼が行われます。
【シフト制等の従業員の申請】
アルバイト、パート、日々雇用、登録型派遣、シフト制の従業員であっても、休業前の実態などによって対象になり得ます。次の例は対象となります。
①労働条件通知書や労働契約書に「週○日勤務」などの具体的な勤務日の記載があり、申請対象月のシフト表が出ており、雇い主がその内容に誤りがないことが確認した場合
②休業開始月前6カ月以上の間、原則として月4日以上の勤務がある事実が給与明細等で確認でき、かつ、新型コロナウイルス感染症の影響がなければ申請対象月も同様の勤務を続けさせる意向だったことを雇い主が記載した場合
つまり、元々の勤務や今後の勤務を考えて、その雇い主の元に一時的ではなく腰を据えて働いていれば、必ずしも固定給の正社員である必要はないということです。
申請手続きについて
【申請方法】
①オンライン https://www.mhlw.go.jp/stf/kyugyoshienkin.html#onlineshinsei
②郵送 https://www.mhlw.go.jp/stf/kyugyoshienkin.html#yuusoushinsei
【申請期間】
休業した期間 締切日(郵送の場合は必着)
令和2年4月~9月 令和2年12月31日(木)
令和2年10月~12月 令和3年3月31日(水)
※申請開始日は休業した期間の翌月初日です。
例:10月の休業の場合は11月1日から申請可能。
【必要書類】
①本人確認書類 : 運転免許証、マイナンバーカード(表面のみ)など
②振込先口座を確認できる書類 : キャッシュカードや通帳の写しなど
③休業前の賃金額と休業中の賃金の支払い状況を確認できる書類 : 給与明細や賃金台帳の写しなど
まとめ
本来であれば法律上当然に受け取ることができる休業手当なので、堂々と代替措置であるこの制度を活用すべきです。特にアルバイト等のシフト勤務の方などは、自身には休業手当に限らずあらゆる権利がないものと考えがちなのですが、そんなことはありません。9月までの休業については年末が締め切りですので、春の休業手当を受け取っていない人もまだ間に合います。
金額的に考えても、少しの手間を乗り越える価値のある制度ですので、対象の可能性があると感じたら、ぜひ申請手続きを進めましょう。
【Q&A】
公式サイトQ&A https://www.mhlw.go.jp/stf/kyugyoshienkin.html#Q&A
【問い合わせ】
新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金コールセンター
・電話番号 : 0120-221-276
・受付時間 : 月~金 8:30~20:00 / 土日祝 8:30~17:15
(休業期間:2020年12月29日~2021年1月3日)