
GettyImagesより
イベント運営や就活支援などを手掛ける株式会社TUMが運営している「社長と晩ごはん」というアプリが、一部ネット上で物議を醸している。
「社長と晩ごはん」は、就活生と企業の社長を対象にしたマッチングアプリで、双方が興味を持てばマッチングしてメッセージのやり取りが行えるというものだ。就活生(つまり大学生)と採用する側の社長が対象となっているため、Twitter上では「すごい直球なパパ活アプリですね」「社長と晩ごはんとかいう実質パパ活アプリ見つけて世も末だなって思った」などと、懐疑的な意見が相次いだ。
まず同アプリの紹介ページを見てみよう。
<企業の社長や人事の方とごはんを食べながらお話し!面接よりも格段に長い時間お話しできるから、自分を知ってもらう最高のチャンス♪ 説明会では聞けない貴重なお話しも聞けちゃうかも!?>
<企業の社長や人事の方に、美味しいごはんをご馳走してもらおう! リラックスして楽しく話せること間違いなし。 普段学生では食べられないような、社長行きつけの贅沢なごはんが食べれちゃうかも♪>
このような形で、就活生のメリットを記している。
だが気になるのは、マッチングした就活生と社長が「食事」に行くことになったとして、そこで何かよくないことが起こっても当事者の自己責任になってしまうのではないかということだ。
就職活動で「OB訪問」を行う学生は多いが、OB訪問におけるパワハラやセクハラの問題はもはや無視できない。昨年2月には、大手ゼネコンの大林組に勤めていた20代男性が、OB訪問の就活女性への強制わいせつの疑いで逮捕された。
男性は社会人と就活生をつなぐアプリ「VISITS OB」を利用して、OB訪問で知り合った女子大生に自宅マンションに連れ込み、わいせつな行為をしたという。また同年3月にも、大手商社の住友商事に勤めていた20代男性が、OB訪問で知り合った女性大生と居酒屋でともに食事をした際、お酒の一気飲みなどを強要。さらに女性大生の宿泊先の部屋に侵入して性的暴行を加えるという事件が発生している。
就活生とOBとのパワーバランスは、圧倒的な偏りがある。まして相手が就職を希望する会社の「社長」であれば、尚更だろう。前述した事件を受けて「Business Insider Japan」が実施・公表した調査結果によると、調査対象の就活生300人中146人が就職活動中にセクハラ被害に遭ったと回答しており、被害に遭った状況は「OB訪問」(46人)が最多だったという。
「VISITS OB」の運営元であるVISITS Technologies株式会社は昨年、アプリを利用した事件が発生したことを受け、OB/OG訪問での面談場所を企業のオフィス内などに制限するガイドラインの作成検討など、安全性の向上に努めると発表している。