
GettyImagesより
性欲は生き物の「本能」だと信じられています。人間として生まれたからには、性的欲望があり、どういった相手に性的に惹かれるかに差はあっても、「誰かに性的に惹かれる」ことは共通している……という思い込みは、この社会に広く浸透しています。
たとえば、「草食化」「若者の恋愛・セックス 離れ」を「問題」として語ることは、「性的関係を求めないのは自然ではない」という価値観に基づいていますよね。
しかし実際には、「人間なら性愛関係を求めるのが当然」という常識(=社会的な圧)に苦しめられる人もまた、少なくありません。性愛関係を重視していない人もいますし、そもそも、「誰にも性的には惹かれない」という人だっているのです。
他人に性的に惹かれる人を「セクシャル」と呼び、誰にも性的には惹かれない人は「アセクシュアル」といいます。セクシャルの人々がアセクシャルの人の気持ちを想像することは難しく、「誰にも性的に惹かれない」と打ち明けられたとき、誤解に基づいたコメントをしてしまいがちです。
そこで、参考にしたい本があります。『見えない性的指向 アセクシュアルのすべて』(ジュリー・ソンドラ・デッカー著、上田勢子翻訳、明石書店)です。
アセクシュアルとはなにか?
アセクシュアルとは性的指向のひとつで、誰にも性的に惹かれることがないことが特徴です。イギリスの1万8千人の成人を対象にした調査では、1%の人がアセクシュアルだったと言います。
アセクシュアルは「選択」ではなく、「性的指向」の「状態」です。ですから、アセクシュアルの人に対して「セックスしないなんて、人生損しているよ。した方がいいよ」とコメントするのは的外れだと言えます。それはたとえば、セクシャルな人に「この人とセックスした方がいいよ。素晴らしいから!」と、その人の好みの性別、体型、年齢、性格とは真逆の誰かをオススメしているようなものなのです。
アセクシュアルの人のほとんどは、自分自身が性的な状況に置かれることを好ましく感じないというだけだといいます。自分が関わらなくてよいのであれば、他者の性行為にとやかく口出しはしません。アセクシャルの人がセクシャルな人に対して、「セックスするなんて人生の半分損をしている。しない方がいい」なんて言うことはありません。なのに、その逆はあるのですね。
1 2