菅政権の支持率急落、短期政権へ? 乗り越えなくてはならない2つの課題

文=斎藤満
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Getty Imagesより

 世に「前門の虎後門の狼」と言います。9月に発足したばかりの菅政権にはまさに立て続けに災難が降りかかっています。コロナ対応で内閣支持率が急落したために急遽「Go To」キャンペーンの一時停止を余儀なくされ、新年には米国からバイデン台風がやってきます。この台風、見た目以上に破壊力が大きく、菅政権も対応を誤ると吹き飛ばされる懸念があります。

支持率急落にショック

 まず毎日新聞が12日に行った世論調査で、菅内閣の支持率が40%と、前月から17ポイントも急落。一方で不支持率が49%に上昇して、支持・不支持が逆転しました。このニュースに、政権には大きなショックが走ったと言います。これまで他社の世論調査でも支持率が急落していましたが、一応支持率が不支持率を上回っていました。それが今回の調査で初めて逆転しました。

 政権が発足した直後の同紙の調査では、支持率が64%、不支持率が27%で、前回11月7日の調査でも支持率は57%、不支持率は36%でした。そこからこのひと月で評価が急落した主因は、政府のコロナ対応のまずさにあるようです。菅政権のコロナ対応について聞くと、「評価する」が14%(前月は34%)、「評価しない」が62%(前月は27%)と、大きく評価を下げました。

 コロナ感染の第3波が襲い、重症者が増え、医療現場がひっ迫する中でも「Go To」キャンペーンを続けたことに批判が集まりました。総理周辺には米国のトランプ大統領と同様に、「新型コロナはただの風邪」との見方があり、一日の感染者は全国でせいぜい2000人まで、との楽観論があったと言います。それが2000人を超え、3000人に達して「どうなっているんだ」との怒声が飛んだと言います。

 また一方で自分を総理に後押ししてくれた二階幹事長が深く関わる旅行業界や、総理が関わる観光業界の救済を優先し、結果として国民の命を軽視する形となった姿勢が問われました。その点、コロナで多くの支持者を失い、再選に失敗した米国のトランプ大統領の二の舞となりかねません。菅政権にはこのコロナが想定外の「前門の虎」となってしまいました。

変節したバイデン氏の怖さ

 12月14日の選挙人投票で過半数を得たバイデン氏の事実上の勝利が確定し、新年には「国際協調」を重んじるバイデン氏が米国の大統領に就任する運びとなりました。トランプ大統領より常識が通じるとの安堵感があり、親中派と言われるバイデン氏のもとなら中国ともうまく付き合えるとの期待が菅政権内にはあるようですが、これは大間違いです。バイデン氏自身の立場が、すでに大きく変わっているためです。

 バイデン新大統領ならびにその息子のハンター・バイデン氏がいずれも中国から不当な資金を得ているとの疑惑をトランプ陣営が言い続けていますが、実際に連邦検察官がハンター・バイデン氏の税務調査に乗り出しています。副大統領であった父親の立場を利用して資金を得ていたとなれば、バイデン新大統領自身の責任も問われます。嫌でも中国とは一線を画さざるを得なくなっています。

 そもそも米国社会が全体として、つまり右も左も反中国化しています。米国中西部の「ラストベルト(錆びた工業地帯)」の労働者が中国に職を奪われたばかりか、スマホや通信関連事業でも米国企業を脅かす存在となりました。

 また、中国政府系ハッカーが米国企業などから情報を盗もうと試みたり、中には国家安全保障にかかわる重要事案にまで侵入するに至り、米国は中国への情報漏洩に神経質になっています。

 そうした結果、中国企業を念頭に置いた監査強化法案を可決したり、中国人への査証(ビザ)発給を停止するなど、中国を排除する動きが各方面で強まっています。これらはバイデン政権になっても変わらないと見られます。

 これは日本の対中国戦略にも大きく影響してきます。特に米国は軍事機密が日本から中国に漏れるリスクを恐れています。その中で注目されるのがこの夏に公表された米国のある報告書です。ワシントンに拠点を置くシンクタンク・戦略国際問題研究所(CSIS)の「日本における中国の影響力」という報告書です。

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