この報告書の中で、安倍政権を中国びいきに導いた人物として、二階幹事長と今井尚哉総理補佐官兼秘書官を名指しで批判しています。それと関係しているのかは定かではありませんが、今井氏は補佐官兼秘書官を解任され、菅政権ではエネルギー担当の内閣府参与に後退、安倍総理は「持病の悪化」という名目で退陣しました。その後を継いだ菅氏は安倍前総理と二階幹事長の支援の下で総理のポストに就きました。
そしてこの報告書をまとめたCSISの副理事長を務めるのが、かつて「ジャパン・ハンドラー」と呼ばれた一人、マイケル・グリーン氏です。つまり、日本と米国政権とを裏で仲介していた人物で、トランプ政権はこのジャパン・ハンドラーを排除しました。それでもCSIS自体は米国の国家安全保障にかかわる重要な地位にあり、大きな影響力を行使しています。
そのナンバー2がまた動き出し、一部にはバイデン政権がマイケル・グリーン副理事長を駐日アメリカ大使に指名するとの情報もあります。そうなると対米外交の窓口はグリーン大使となります。彼の監視のもとに、菅政権がバイデン政権にとって不都合な存在と見られれば、政権を追われる可能性もあります。コロナで菅政権の屋台骨が揺らいでいるだけに、まさに「後門の狼」になります。
菅短命政権を避けるには
バイデン台風が来るまでにはまだ少し時間があります。その前にまずコロナ禍で不安が渦巻く国民の救済が急務です。その点、「Go To」の停止だけでは済みません。政府、厚労省がPCR検査に消極的なので、民間機関での検査に人が殺到しています。そこでの「陽性」者が報告もされず、野放図になっているとの報道もあります。感染者の隔離のためにも、民間のPCR検査との連携が必要です。
補正予算で遅ればせながら医療従事者の処遇改善、時短協力企業への補償増額が提示されましたが、職を失った労働者への配慮が欠けています。年末年始を乗り越えるには、緊急の所得支援、救済が必要ですが、コロナ対策予算は補正予算の2割余りにとどまり、ほとんどがアフターコロナ対策になっています。政府に危機感が足りません。
予備費が追加され、積み残し分と合わせると10兆円を大きく超える資金が眠っています。職を失って家賃を払えず、路上で正月を迎える人を救済するには、家賃支援が必要です。失業保険の上乗せ、給付期間の延長も必要です。雇用保険非加入者の失業救済には給付金の支給が必要になります。これらの申請から給付まで何カ月もかけるやり方は意味がありません。
予備費を自治体に交付し、そこから必要な人に即刻支援金が回る体制作りが必要です。例えば、企業に解雇(休業)通知書を発行させ、それを持って役所に申請に行けば、すぐに支援金をもらえるシステムなどです。内閣支持率の急落は、政府にコロナ感染の危機感が欠如し、国民の命、生活を守る意識、スピード感が欠けていることにあります。政権を守りたければ、2の矢、3の矢を即刻放つ必要があります。
(斎藤満)
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