座間9人殺害事件・白石隆浩が法廷で語った「ヒモになりたい」という欲望

文=高橋ユキ
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GettyImagesより

 2005年(平成17年)から、主に刑事裁判を見つめ続けてきた、傍聴ライターの高橋ユキさん。恋愛関係のもつれからの絞殺、夫婦関係悪化の末の撲殺、金目当ての拉致監禁ののちに橋から落として溺死……など、さまざまな凶悪事件の公判を多く取材してきた高橋さんによる、5つの事件の傍聴記をお届けします。

 今回は前編として、11月に判決の出た【座間9人殺害事件】、札幌や東京で起きた【連続女児わいせつ事件】を扱います。

座間9人殺害事件

 2020年、傍聴席の減少などがありながらも、刑事裁判の開廷は続いた。新型コロナウイルス感染拡大により生活が一変して以降、メディアでもっとも大きく報じられたのは、座間で起きた9人殺害事件の公判であろう。

 一連の事件が発覚したきっかけ2017年10月24日のこと。この日、高尾署はある女性の行方不明届を受理した。捜査の過程で失踪間際の女性のSNSから白石隆浩(30)が浮上。同月30日、白石の居住する座間市内のアパートを訪問した。

 応対した白石に対し、警察官が女性の行方を追及すると、当初は「知らない」と言っていたものの、まもなく観念し「金と性欲目的で人を殺した」と自ら告白した。室内からはその女性(のちに公判ではアルファベット「I」さんという呼称で呼ばれる)を含む頭部の遺体が次々と発見され、被害者は9名であることが明らかになる。

 翌日未明に死体遺棄罪で逮捕された白石は、強盗・強制性交等殺人、強盗殺人などの罪でも逮捕起訴され、事件発覚から3年が経った2020年9月30日、東京地裁立川支部で裁判員裁判初公判が開かれた。

 弁護人は「いずれの犯行中も精神病に罹患しており心神喪失状態だったか少なくとも心神耗弱状態だった」と主張したものの、白石本人は起訴事実全てを認めている。この日の検察側冒頭陳述によれば、9人の被害者らを自宅に呼び寄せ殺害し、その遺体を解体したという一連の犯行は「ヒモになりたい」という欲望からスタートした。

「折り合いの悪い父のもとを離れ、働かず、女のヒモになりたい」

「被告は高校卒業後、スーパーやパチンコ店での勤務を転々としていた。2015年10月ごろ、インターネットで出会った女性を風俗に紹介するスカウト業を始めた。2017年2月、このスカウトに絡み、職業安定法違反で起訴された。翌月に保釈され実家に戻り、父と二人暮らしをしながら、倉庫会社でアルバイトをしていた。被告は『折り合いの悪い父のもとを離れ、働かず、女のヒモになりたい』と考えるようになり『自殺願望のある女なら、いいなりにしやすいのではないか』と思い、3月15日にTwitterを始めて女性とのやりとりを開始し、自殺願望があると嘘をついて女性を誘い始めた」(検察側冒頭陳述)

 最初の被害者Aさんと知り合った白石被告は、説得してAさんの自殺を思いとどまらせた。その後、同棲を持ちかけてAさんから金を借り、現場となったアパートに入居する。ただ、すでに「ヒモになれなかったら殺そうと、ロフト付きの部屋にした」と、殺害することも念頭に置いていたという。最終的に、いずれはAさんは自分の元を離れるのではという思いから、殺害を決意した。

 その後も同様に「自殺願望のある女性を自宅に誘い込み、金づるにできるかどうか見極め、金づるになる見込みがなければ失神させて姦淫し、殺害して遺体を徹底的に損壊しよう」と犯行を重ねていった。

 当初はあくまでもヒモ目的だったが、Aさんの事件時、失神させて姦淫した際に「通常の性行為では得られない快感を得られた」ことから「働かず金が手に入り性的欲求も満たせる」と、殺害前に必ず姦淫するようになった。一人の被害者に対しては死後にも姦淫している。一連の事件時、白石被告は職業安定法違反により有罪判決を受けた直後で、執行猶予中だった。

 11月26日の公判で検察側は「2カ月間に9人もの未来ある若者の命が奪われた。前代未聞の猟奇的な事件で、万死に値する」と白石被告に死刑を求刑。翌月15日には求刑通りの死刑が言い渡された。

 逮捕後、両親や妹は一度も面会に訪れることがないという。公判で読み上げられた母親の調書では「おとなしく、心を開ける相手でないと自分から話せなかった」と幼少期の様子が明かされたが、「父親の元を離れてヒモになりたい」と思うに至った背景には何があったか。「虫を殺すこともできない気の小さい子供だった」彼がなぜ「ヒモになりたい」という軽い動機で9人もの命を奪ったのか。公判を経てもいまだはっきりとしない。

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