2020年3月以来、精神科病院での新型コロナ感染が続いており、入院患者の感染率と死亡率は日本全体の4倍に達している。
そもそも精神科病院に、本格的な感染症対策は可能なのだろうか? この問いに答えることは、簡単ではない。精神科病院には、人員が手厚く設備の充実した病棟もあれば、少ない人員でコストを抑えて収容する病棟まであるからだ。しかし、感染症対策が難しくなりがちなパターンは、確実に存在する。
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精神科病院の新型コロナ感染、全体像は不明のまま
精神科病院に限らず、病院の入院患者または職員が新型コロナウイルスに感染した場合、医師には、感染症法に基づく届け出が義務付けられている。検査を行わずに「ただの風邪」と、見てみないふりをしていれば、感染が拡大し、いずれは隠せなくなる。つまり感染が判明した事例に関する精神科病院の届け出率は、タテマエ上は100%でなくてはならない。おそらく、ほぼ100%であろう。
とはいえ、一般市民に公開される情報は限られている。感染者が発生した病院の所在地の自治体は、性別や年齢や重症度を含む詳細な情報を得ているのだが、当該自治体であるX市のWebサイトには「3月1日、市内の病院で入院患者10名、職員5名の感染が確認されました」と、具体的な病院名が伏せられた形で掲載されることが多い。特に精神科病院に関しては、そのような形となる傾向がある。ダメ押しのように、「問い合わせには応じられません」という一言が追加されている場合も、その理由として「プライバシー」「人権」が挙げられている場合もある。
X市内にあるY病院のWebサイトに「3月1日、当院の入院患者様10名、職員5名の感染が確認されました」と同内容の告知があれば、「Y病院のことだろう」と推測することができる。Y病院は精神科病院であることが判明していれば、「X市の精神科病院Y病院で、入院患者10名、職員5名が新型コロナウイルスに感染したようだ」とも推測できる。