ステイホームでネットコミュニケーションが活性化していくなか、友人のSNSが何やら不思議な感じになってきた……!? そんな違和感を覚えたとき、こんな表現、ふるまいが出てきているかどうかをチェックしてみてください。これはスピリチュアルに傾倒し始めた人たちが好んで使う言い回しや考え方。スピリチュアルそのものが悪いわけではありませんが、スピリチュアル的な解釈で物事を都合よく盛ったり、時には高額セミナーへ誘導したりするなんて話も。
そこでこういった表現を「スピしぐさ」と名づけ、Twitterでハッシュタグを作ったのが今年の6月。すると出てくる出てくるネットのそこここで見られるアレらの共通項が! 投稿してくださったみなさまの秀逸な作品を参考にさせていただきつつ、こちらへコンパクトにまとめました。年末年始の暇つぶしに、ぜひお楽しみくださいませ。
それでははじまりはじまり~。
1 なんでもかんでも縁縁縁! 「縁」がゲシュタルト崩壊
「あなたと出会ったのも何かのご縁。ご縁があるから、この場所に出向いたの。お茶会に参加するご縁があるわ。ご縁を結ぶお手伝いをしたい」etc.そんなにご縁ご縁と言われると、何やら特別感が生まれてくるのであら不思議。ってはずもなく、そりゃあこの世のすべてはご縁ですがな。ここへさらに「お導き」という言葉で大いなる存在を匂わせると、宗教感が高まります。
2 いいことは何でも「引き寄せてる!」と解釈
「意識を向けたものは現実になりやすい」という成功法則「引き寄せの法則」。宝くじが当たった、憧れの有名人に会えたなどのビッグな棚ボタ案件はもちろん、大事な日が晴れたときや、探していたお菓子が入荷された程度でも、無邪気に「引き寄せた!」とはしゃぐ姿は、失礼ながら少々不気味です(そして財布の中身は、教祖さまに引き寄せられていくのでしょう)。より詳しくそれっぽくふるまいたい、話を会わせたいときは「願望の具現化」「潜在意識への作用」「エネルギーの科学」……こんな言葉をくっつけておくといいようです。
3 意識高い(別次元の?)「当て字」を多用
意味深さの漂う「当て字」を使うのは、同士発見のリトマス紙なんでしょうか。
縁(円)、氣(気)、望年会(忘年会)、志事(仕事)、心友(親友)、輝業(起業)、ありがとうご財増す(ありがとうございます)、顔晴る(頑張る)、最幸(最高)、朝勝つ(朝活)、自分自神(自分自身)
「宇宙と繋がるお話会 参加費1,000縁」……友人のシェア記事や投稿にこんな呼びかけを見つけたら、そっ閉じして触れぬが吉。
4 思い付き=「降りてきた」
そうだ、沖縄に行こう。そうだ、子宮の唄を聞くお話会をしよう。そうだ、自作ポエムを売ろう。そうだ、お姫さまになれるイベントをしよう。
傍からみればこんな「思い付き」も、本人たちの感覚では「偉大なる存在から受け取ったメッセージ」。目にうつるすべてのことはメッセージ~なのはやさしさに包まれたからではなく、集金したいからかもしれませんけど。ああ失礼。その発想自体も降りてきたんでしたっけね。「降りてきました」と聞くと、昭和な私は「イタコ」を連想してしまいますが、イマドキは宇宙やら女神からの啓示を受け取る光の戦士たちってノリのようです。
5 都合が悪くなると「ステージが変わった」と言う
友人に疎遠にされた、仲間割れした、批判されたetc. そんなときはこれを唱えておけば、ポジティブに過ごせそう。そう、世俗からワンランク上の「ステージ」に上がったから、周りがついてこられなくなったと考えているのです。
優越感といえば太い客をもてなす「VIPルーム」がありますが、なんせそこ通されるには、強力なコネか大金が必要。その点「ステージ」は自称ですからスーパーお手軽です。
スピ界隈では、教祖同士、信者同士がすぐに「ソウルメイト!」と盛り上がってくっついたと思えば、翌月には「ステージが違った」と喧嘩別れするという光景もめずらしくありません。周りを巻き込んでの大騒ぎが発生するのも、きっと情熱的に生きているからでしょう。
6 龍が大発生している
昨今のスピ界トレンドは、龍。Amazonでちょっと書籍を検索するだけでも、龍とつながる方法や龍を味方につける方法、「龍神医学」なんてものまでありました。一ミリもその手のものが見えない私には検証しようがありませんが、あの雲もあの光も、高頻度で現れるレンズフレアまでがみーーんな龍神さま♡ ってなってるのはさすがに大発生しすぎでは(ひと昔前だとこれが天使だったのかなあ)。ついでに龍と同じくらい、前世が卑弥呼だ瀬織津姫だクレオパトラだと「歴史上の人物」と自称する人が発生しています。
7 常識や思考を敵視する
「思考でガチガチなのをゆるめよう!」「大切なのは、気分」といって「感性」「感覚」を過剰に大切にするスピしぐさ。これは真っ当な理論では、矛盾がいっぱいあるのがバレてしまうからなのでしょうか? 体の声に耳をすませましょう~系の健康法でも、常套句。軽く取り入れるぶんにはまったく問題ないですが、これが過ぎると、反医療につながるので要注意。「●●しなければならないというのは思い込み」「常識を疑え!」「いい子であるのをやめました」と言い出すのは、沼入りする準備が整った合言葉でしょう。
8 感謝と愛がとにかく安い
「ご縁に感謝!」「出会いに感謝!」「仲間に感謝」「今日という日に感謝」「命に感謝」
1の「縁」と同じくらいに、感謝感謝の大バーゲン。それの何が悪いのかって? Facebookで友人の投稿に毎回毎回「気付きをありがとう」「学びをありがとう」とコメントされるのが、居心地悪い人もいるのです。さらにその手の人にありがちなのが、愛や感謝を多用するわりには、自分以外の人間を虫けらのように扱うこと。大災害は自分の祈りがあったからこの程度で済んだ、自死した有名人の事件は自分が預言していたetc. そういう過激派の発信で、感謝と愛が胡散臭い要注意ワードに変質しています。
9 日常の現象を星の巡りにあてはめる
星の動きから運命や吉兆を読み取るのは、伝統的な占いの多くで行われてきたこと。我々の生活に根付いている「暦」も天体の動きから作られているものですから、日常生活で星を語ることはめずらしくありません。……なのですが、スピモノはそこから100歩くらい先を行き、パソコンが壊れてもお腹を下しても寝坊をしても、満月新月水星逆行ドラゴンゲート二極化夏至冬至が原因! と壮大に語ります。
満月に財布をフリフリするというおまじないはまだかわいいものですが、月の満ち欠けと月経のタイミングを合わせる~という無理難題も存在するほど、スピっ子たちは星が大好き。それなのに、宇宙開発や天体ニュースそのものには、あまり興味がなさそうなのが不思議です。
10 偶然は認めず、すべてを必然とする
すべてはベストなタイミングで起こること。人間関係のトラブルも、成長のための試練。この出会いは大いなる存在のギフト。子どもは空の上から親を選んで生まれてくる。すべては繋がり、循環している。上手くいかないことは「お試し」がきている証。
こういったことを言い出すと、数字がぞろ目にそろったとき信号が一斉に青になったときも、すべてが宇宙とのシンクロ! とテンションが上がって楽しそう。ですが「大災害は浄化のため」とかは、さすがにMUNAKUSO過ぎますので、お控えいただけませんかね。
11「宇宙」「地球」とどでかいカテゴリーを使う
私たちは「地球家族」「宇宙仲間」! いや確かにそうなんですけど、こういうことを言い出す人たちは、たとえ同じ町内に住んでいてもどこか異次元の住人。余談ですが「宇宙母さん」というアカウントがありまして、またこの手か~と怪しんだら、ガチの宇宙開発の方だった。何でも穿つのはいかんと反省した思い出があります。
スピった「宇宙」の強烈な活用法では「宇宙銀行」ってのもありましたね。愛と感謝を宇宙銀行に預金するつもりで日々を過ごすと、恩恵がバックされるというヤツ。一見ポジティブな取り組みに思えますが、その愛と感謝の表われが日本銀行券を手放す行為になりがちです。お金はエネルギーだから出して回す! と言いますが、だいたい教祖というブラックホールに吸い込まれているだけなようですよ。
12 「邪な敵」が存在する
光あるところには影が生まれるのが、この世の理。ところがスピしぐさでは、自分が気に食わない反応をされたときに、タイミングよく敵が現れるのです。勧誘を断る→「貴女の中の悪いものが貴女の幸せを拒んでいる」、渋滞や大雨→「あなたの抵抗が引き起こした」、そして「覚悟を決められないんですね」と捨て台詞。ついでに自分にとって都合の悪い人間を「アンチ」「エネルギーバンパイヤ」と表現する輩もたくさん。
また、世界が発展するために開発されてきたさまざまな取り組み(医療や食の工業化など)を「陰謀」とするのも、定番です。ちなみに命を狙われるレベルの門外不出極秘情報も一部のセレブだけが知っている秘伝も、有料でぜーんぶ教えてもらえるのって不思議ですね。
13 擬人化が過ぎる
子宮がグレて暴言を吐いたり石と対話したり龍と交信したり、大木に抱き着いて地球の声に耳をすませたり。本来聴こえないはずの声には熱心に耳を傾けるのに、周りの人の話を聞かないのもスピしぐさ。物品を「この子」と呼び、購入することを「お迎えしました」とSNSにアップするのもお約束ですが、これはスピ界隈だけでなく、人形者でもよくある表現ですね。最近で一番無理だと感じたのは、新型コロナウイルスを「コロちゃん」と言い出すヤツでした。
14 「古神道」を都合よく使う
スピしぐさを嗜む方々のお説には、超解釈の古神道が頻発。本職の方々からツッコまれると「私の作法は古神道に基づくもので、神社本庁式ではありません」とアナウンスするまでが様式美となっているようです。神社関係のスピしぐさ投稿では、みどうえいた@神道的生活 (@eita_emma)さんの「神様の眷属を、ポケモン感覚で語る」が最高でした。
※眷属(けんぞく)→使者。神道の場合はキツネや龍など
15 相手を引き込む合言葉は「ブロック外し」「バンジー」「ダイビング」
高額な金額を支払ったり、あられもない姿を全世界に発信したりと、思い切った行動をすることをこう表現し、非日常感と仲間意識を高めるために、多用されている模様。まずは行動することが大事! と賽銭箱に1万円を入れる「神社ミッション」(by心屋仁之助氏)も、バンジーの類でしょうか? 周りに煽られ思い切ったことを続けていると、常識の感覚が麻痺して破滅するまで俗世に戻ってこられなくなりそうでああ怖い怖い。
16 素手信仰
素手で仕事をするほうが心がこもっていると考える精神論から生まれる文化も、スピしぐさと隣り合わせ。素手で握ったおにぎりのほうがおいしい。素手でトイレ掃除をして強い心を育てる。そんな謎の言説がありますが、常在菌が死ぬから手を洗わない、手の表面についた菌でヨーグルトを作る~とまでいくと、控えめに言っても狂気の域。その類のものは「右回りに回してエネルギーをどうたらこうたら~」という謎のお作法もだいたいセットになっています。感染症や腐敗がつきまとうので、素手信仰もほどほどに。
17 伝説の地に郷愁を覚える
まだ見ぬ地や外国の文化に郷愁を覚えることはめずらしくありませんが、スピしぐさのそれは次元違い。「レムリアの記憶に酔いしれアトランティスとムー大陸の悲劇にも涙し、拗らせてセドナとシャスタ巡礼の旅へ」(by 白狼あかね@blanc_wolf_noir)
18 肩書が長い
「かみさまのことたまメッセンジャー」「スピリチュアルアロマヒーリングアドバイザー」「穴口恵子認定レインボーエンジェルセラピープロテクショナー」「プロフェッショナル振動数を 次元上昇させるリーダー養成塾」「龍が見える神仏研究家兼スピリチュアルライフアドバイザー」「歌う助産師アロマセラピスト」ーーこんな感じ(一部実在します)の肩書がそこここに存在。声に出して読んでみると、舌を噛みそうです。もちろん短ければ怪しくないというわけではありません。
19 前世が心の拠り所
「現世より前世を重んじる」(by編集・執筆 E.KIMURA@mitopub)なる投稿があったように、現実世界での関係性や肩書よりも前世のドラマチックな物語で自分語りをするのがお好き。ちなみに私の友人が参加した某宗教団体の会食では、あちこちで前世トークが始まり、「迫害されて虐殺された前世」を持つ人が、ヒエラルキー上位を占めていたそう。スピしぐさでは、苦労しているほうが魂のクラスが高いという、謎のランク付けも「あるある」です。
20 語りにくいものは「エネルギー」という言葉のオブラートに包む
性の話やお金の話。それを差し出せというのはあまりに生々しい。そこを「エネルギーの交換」と言い換えれば少しお上品なテイストになり、なんとなく言いくるめられるのでしょうか? 「波動」「量子力学」も、同様に便利に使われている模様です。
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さて今回は20個の「しぐさ」を厳選しましたが、正直100は軽いでしょう。元ネタとなったみなさまの秀逸な投稿堪能したい方は、Twitterで「#スピしぐさ」と検索していただくか、togetterをお借りしてまとめたこちらをぜひお楽しみください。
これらはマルチや自己啓発との共通点も盛りだくさん。友人知人の投稿やふるまいにこんなしぐさを見かけたら、ソーシャルもメンタルもディスタンスの準備をしたほうがよさそうです。