堀潤「たいてい、人の心の扉は固く閉まっている」コミュニケーションで大事な5つのポイント

文=和久井香菜子
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(堀潤さん提供写真)

「どうも人とうまく話ができない」
「人が自分の話を聞いてくれない」
「子どもが言うことを聞かない」
「婚活がうまくいかない」

 人間関係の悩みは尽きない。「人と気持ちよくコミュニケーションを取れる方法」があるなら知りたいと思う人は、多いのではないだろうか。

 ジャーナリストの堀潤さんが開催するオンラインサロン「堀潤が、伝わる話し方、お教えします。」は、話し方に関するさまざまなコツを伝授してくれる講座だ。そこには、人との気持ちよいコミュニケーションのヒントが詰まっている。そこで、基本となるポイントを5つに絞ってお伝えする。

(※オンラインサロンの内容は原則公開NGです。本稿ではご本人の許可を得て掲載します)

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堀潤
立教大学文学部ドイツ文学科卒業後、2001年NHK入局。アナウンサーとして「ニュースウォッチ9」リポーター「Bizスポ」キャスター等、報道番組を担当。2012年市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、2013年4月1日付でNHKを退局。現在は、ジャーナリスト・キャスターとして独自の取材や報道・情報番組、執筆など多岐に渡り活動している。淑徳大学人文学部客員教授。早稲田大学科学知融合研究所招聘研究員。2020年、自身で監督、出演、制作を行った映画「わたしは分断を許さない」を公開。

 

1「相手に興味を持つ」

「私に興味がないの?」と疑心感を持たれるとうまく会話になりません。その人そのものの人間性、バックグラウンド、クセ、なにに一番悩んでいるのか、どんなことに悩んでいるのか、どんなことならモチベーションが上がるのか。人と関わる際の基本姿勢として、まず人に興味を持ってみませんか。

2 「知りたい」が「聞く」姿勢になる

「話をする」と言っても、話そうと思ったらダメです。まずは相手のことを「知りたい」から入りましょう。

「伝えること」は「聞くこと」です。何かを喋って理解してもらうのではなく、相手は今自分に何を期待しているのか、何を知りたい・聞きたいと思っているのか、それをまずリサーチすること。「聞く」姿勢から入れば、どう、何を話せば伝わるのかがわかってくるでしょう。

本当に知りたいと思ったら、自然と会話は続くもの。「質問をすればいい」と思って、追い込まれたように目の前にある適当なものをネタにしても話は続きません。意外と相手に気持ちを見抜かれているものです。

3 相手の言葉を受け止める

相手の言葉をちゃんと最後まで聞くこと。適当な相づちを打ってしまったり、大して共感していないのに「そうですよね」なんて答えてしまって、「人の話をちゃんと聞いてる?」と突っ込まれたり。雑談の時間は、その人を構成するいろんな要素を知る機会です。しっかり相手の話を聞いて考えましょう。自分の意見と違うなと思ったら「面白いですね、なるほど。僕は普段こう思っちゃったりします」と、相手の意見を一旦受け止めるとよいです。

4 思いよりも「事実」を語る

初対面やあまり親しくない人との会話では、意見や思いを聞いてもなかなか話が続きません。「なんでいきなり知らない人に自分の本音を話さなきゃいけないの」と思うかも。それよりも事実や情報に繋がるものを聞く方がいいんです。

「その服ステキですね、どうして選んだんですか?」と聞くと、「好きなんで」「気に入ったんで」「たまたま」といった返事になりがちでその後が続きにくい。「どこで買ったんですか?」「どこかのブランドですか?」とファクトを聞くと、会話のやり取りにテンポが出てきます。

たいてい、人の心の扉は固く閉まっているので、それをこじ開けるようなことを「どうして初めて会った人にしなきゃいけないんだ」と思うもの。「どう思ったか」「何が好みか」は親しくない相手には避けた方が無難です。

5 沈黙を恐れない

沈黙は、それが気まずい雰囲気でなければ恐れる必要はありません。答えを考えているのかもしれないし、先ほどの会話を反芻しているのかもしれません。沈黙を恐れて矢継ぎ早に話を続けるよりも、相手の様子やテンポをみましょう。

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(堀潤さん提供写真)

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 ……耳の痛い人は多いのではないだろうか。筆者も、「会話力」というと「面白おかしく喋ること」と思ってしまい、ひたすら自分の話ばかりして相手を白けさせた経験がたくさんある。

 以前取材した婚活コンサルの方が、「自分の話は2割、相手の話を聞くのが8割の感覚で話すと、ちょうど五分五分になる」と言っていた。自分が話す時間は短く、人の話を聞く時間は長く感じるもの。筆者は酔っぱらうと自分語りが長くなるのでいつも反省だ。

 「パートナーが自分の話を聞いてくれない」「婚活でメッセを送っても返事が来ない」というような人は、その内容に注意してみるといい。自分の話ばかりしていないか、相手を知りたいと思って質問をしているか。自分の話しかしないのは、気遣いもなく自分にしか興味がない証拠でもある。相手が誰でもいい一方通行の発言は「会話」ではないのだ。特に婚活の場で自分語りしかしないのは致命的だ。

 家族やパートナーなど親しい相手と思いや考えを共有するのは大事だけれど、自分の「思い」はなかなか言いづらいこともある。初対面の男性にいきなり「僕のことをどう思いますか」と聞かれて困ったことがある。「会って5分でそんなこと聞く気持ちの悪い人です」とも言いづらいし……。

 「この人と話すのは心地がいいな」という相手を思い浮かべてみよう。「自分の話を興味深く聞いて掘り下げて質問してくれる人」ではないだろうか。一方的に自分ばかり話していると、楽しいのは自分だけで相手は接待モードになっている可能性が高そうだ。

 「話を聞くのが好きな人」は、本当に楽しんでいるというよりも、おつきあいに必須の「マナー」だと思っている、と考えておいた方がいい。自分の話を今日に深く聞いてくれる人には、つい調子に乗って自分の話ばかりしてしまうが、途中で理性を取り戻そう。筆者は傾聴と深掘りのための質問をするようになってから相手に「楽しかった」と言われることが多くなった。

 自分が「聞く」ことを意識すると、人のことも見分けられるようになってくる。講師、コンサルティングなど、「話す」仕事の人で、他人の話を聞かずに自分の話ばかりすることがある。こういう人の仕事の質は高くないだろうなと見分けがつくようになった。筆者はマナー系の習い事をしていたのだが、講師がいつも人の話を最後まで聞かずに途中から自分の話に持って行ってしまうので「マナーとは一体?」と思ってやめてしまった。

 堀潤さんは「何が『思い』で何が『ファクト』なのか、普段から自分の頭を整理して練習しておくといいですよ」とアドバイスする。会話力も経験とスキル、訓練が必要なのだ。

 サロンではこのほかに「ひと言でいうと○○です」という訓練をする、イメージよりもファクトを語るなど、話し方のコツを山ほど教えてくれる。参加者にカスタマイズした講義も作ってくれるという。こうして「会話」について学んだ人と、知識として学んでいない人ではコミュニケーション能力にかなり差が出てきそうだ。

 最後に、「聞く」技術を学べる本を紹介したい。きっと人との関係がうまくいくようになり、生きやすくなるに違いない。

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『誰からも好かれる NHKの話し方』

『誰からも好かれる NHKの話し方』

勤続20年以上のNHKアナウンサーにインタビューし、話し方のコツをまとめた本。雑談、聞き方のコツ、わかりやすく話すコツ、人前で話すコツ、発声のコツなど、アナウンサーの教則本とも言える本。

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『新版 笑顔のコーチング 子育て77のヒント』

『新版 笑顔のコーチング 子育て77のヒント』

子どものいる人には是非読んでほしい本。親は自分が思っているほど、子どものことを理解していないもの。どんなときにどんな質問をすればいいのか、子どもとのコミュニケーションの秘訣を教えてくれる。

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『ハーバード流「聞く」技術』

『ハーバード流「聞く」技術』

ハーバード流と言っているけれど、中身は奥さんや相方とのコミュニケーションの取り方の具体例。語り口調でわかりやすい。パックンが失敗談を含めて「聞く」ことの大切さやコツを教えてくれる。

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