米国議会議事堂の暴動〜トランプ弾劾と、バイデン就任式までのカウントダウン

文=堂本かおる
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警察の関与

 今回の暴動における警察の対応についての疑惑が持ち上がっている。午前中のトランプ集会は以前より告知されていたにも関わらず、議事堂に配備されていた警官の数はなぜあれほど少なかったのか。

 もっとも、現場にいた警官たちは暴徒に殺害された警官以外も命の危機を体験している。ある警官は大量の暴徒とドアに挟まれ、圧死寸前の絶叫の瞬間を録画されている。地面に引き倒され、殴打された警官もいる。議事堂には複数の入り口があり、ある黒人警官はたった1人で大勢の白人暴徒に対面する羽目となった。警官は暴徒を意図的に議場へのドアの反対方向に誘導しており、自らの命を賭けて議員たちを救ったと言える。

 暴徒の中にはBlue Lives Matterの旗を振っている者もいた。BLMに対抗し、「警察の命も大事だ」と主張し、星条旗を警察の象徴である「青」と黒で塗り替えた旗だ。暴動を観察していたある人物は、当初、暴徒は警察が自分たちの側に立つと信じていたようだと語っている。実際に封鎖バリケードを開いて暴徒を誘導する警官の姿も撮影されている。昨年、全米各地のBLMデモに配備された白人警官たちの中に、片手の指で「W」と「P」を形作るホワイト・パワーのサインを見せて記念撮影を行っていた者がいることは周知だ。だが、この日は暴徒を阻止しようとする警官に怒り、持参のBlue Lives Matter旗を破り捨てる者もいた。

 さらにFBIは暴動前日に暴動を察知して警告書を出していたが、提出後のいずれかの時点で握りつぶされていたと報じられている。警告書には、暴動参加予定者が「これをマーチ、集会、または抗議と呼ぶのは止めろ」「戦闘準備の上、現地に赴け」などと書いていたとある。

 以前より旗の販売を行なっていたある暴徒は、「いつもは旗だけを売っているが、今は戦術用の棒を付けて売っている」とSNSに記述していた。今回、暴徒は持参した旗のポール(棒)で警官を殴るなどの暴力行為を行なった。警官から奪った警棒や松葉杖を使う者もいた。ワシントンD.C.はオープン・キャリー(銃を他者から見えるように携帯)が禁じられており、大型銃の持参が難しかったことが理由と思われる。

 ちなみにトランプは暴動の最中に殺害された警官について、一言のメッセージも発していない。

SNSから締め出されたトランプ

 暴動後、ツイッター、フェイスブックを筆頭に主だったSNSのほぼすべてがトランプのアカウントを凍結した。その直後、トランプは大統領公式アカウントを使い始めたが、ツイッター社はこれも即座に凍結。するとトランプは自身のスタッフの個人アカウントのアイコンを自分の写真に置き換えて使ったが、これも凍結された。アマゾンも暴徒たちの温床となっているSNS・パーラーをサーバーから削除。パーラーが他のサーバーに乗り換えるまでに1週間ほどかかるとされている。さらに全米プロゴルフ協会(PGA)は、2022年の全米プロゴルフ選手権をトランプ所有のゴルフコースで開催予定だったが、これを取りやめた。

 このように民間、私企業レベルでのトランプ締め出しが進み、かつ各省長官、高官、ホワイトハウス職員の辞職も相次いでいる。民主党側はトランプの辞任はあり得ないとして、まず副大統領のマイク・ペンスに憲法修正第25条を発動するよう求めた。本来は大統領が重病や深刻な負傷などで意識を無くした際に副大統領が大統領となる条項だ。しかしペンスは25条を発動せず、民主党はトランプに対し、2度目の弾劾を進めている。

 弾劾の理由は「反乱の煽動」だ。暴動直前の「アメリカを救う」集会で、トランプは支持者に暴動を煽動した。いわく「我々は(議事堂へと続く)ペンシルヴァニア大通りを歩こう」「議事堂に行こう」「弱い共和党議員を助けよう」。加えて、議事堂で始まるバイデンの大統領最終認定を差し止められないペンスへの批判も行なった。暴動の最中、暴徒は「マイク・ペンスを吊るせ!」と繰り返し、議事堂のそばでは即席の絞首刑台も見つかっている。暴動が収まった今も、ペンスとトランプの仲は当然ながら冷え切っている。

 大統領が乱心し、副大統領は機能せず、内閣もホワイトハウスも綻びだらけの中、あと数日でバイデン/ハリスの就任式が行われる。その際に2人が暗殺の標的となることは十分にあり得る。FBIはワシントンD.C.だけでなく、全米50州の州都に対し、今週末から就任式の20日にかけて暴力を伴う抗議行動が起こると警告を発している。

 同時にコロナ、わけても英国変異種拡散の恐怖もある。暴動の最中、議員たちは狭い部屋に避難を余儀なくされたが、共和党議員の中にマスク着用を拒否した者たちがいた。後日、避難部屋にいた議員のうち3人がコロナ陽性と報じられた。

 共和党の州議会議員の中に、暴動に荷担し、自撮りの映像を公開して辞任を余儀なくされた者がいる。共和党の上院議員ジョシュ・ハウリーは暴動直前に行進するトランプ支持者に片手の拳をあげて応援。暴動鎮圧後に再開された選挙人集計会議でバイデン認定を阻止しようとしたハウリーと、同じく上院議員のテッド・クルーズに激しい批判が集中し、辞任を求める声も出ている。6月に出版予定だったハウリーの書籍は出版社によってすでに発売中止となっている。

 今回の暴動が「アメリカを救う」集会から自然発生したものでないことは確かだ。首謀者の特定、政権、軍、警察の関与があったのか否か。全てが明らかにされなければならない。いずれにせよアメリカは今、明日をも知れない満身創痍の状態なのである。
(堂本かおる)

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