「明治」で体重・ウエスト・既往歴を尋ねる採用面接 「古い慣習」「モラル疑う」と批判集まる

文=雪代すみれ
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GettyImagesより

 食品大手・株式会社明治(本社は東京)の大阪工場(大阪府高槻市)のアルバイト採用面接で、応募段階で体重やウエストサイズ、既往歴などの記入を求めていたことが明らかになり、ネット上で物議を醸している。

 報道によると同社大阪工場では、10年以上前から採用面接時の面接票で体重やウエストをたずね、2015年からは既往歴や労災歴も聞いていた。

 職業安定法では「業務の目的の達成に必要な範囲内」での個人情報の収集が認められているが、昨年12月、職業安定所(ハローワーク)は<直ちに法律違反ではないものの、法に抵触する恐れがある>と同工場に行政指導を実施。行政指導後に同社が全国の工場に調査を行ったところ、同様の面接票を使用していたのは大阪工場のみだったという。同工場は面接票を廃止するとのことだ。

 なお、明治の広報は朝日新聞の取材に<身長や体重などの質問は「作業着を作るために確認していた」、既往歴については「安全、健康に勤務してもらうためだった。小麦などを扱うため、アレルギーを持たれている方が原因物質に触れないようにする目的だった」>と説明したようだ。

採用面接もアップデートが必要

 この件につき、ネット上では「採用後ならわかるけど面接段階で必要な情報?」「S・M・Lなどのサイズだけわかれば十分」「アレルギー以外の既往歴を聞くのはプライバシーの侵害では」など、明治に対して批判の声が集まっている。

 「平成11年労働省告示第141号」の指針では、求職者等の個人情報の取扱いについて、<特別な職業上の必要性が存在することその他業務の目的の達成に必要不可欠であって、収集目的を示して本人から収集する場合>を除き、以下の情報の個人情報の収集をしてはならないとしている。

・人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項
・思想及び信条
・労働組合への加入状況

 なお、既往歴は上記の例示には含まれていないものの、業務に影響のない病歴まで記載を求める必要はない。その点からもアレルギーだけでなく、既往歴や労災歴の記載の要求は不適切だろう。

 慣習に従った採用は業務効率化の一環だろう。しかし今、時代は急速に変化している。採用過程における人権感覚のアップデートが必要だ。例えば、以前は”普通”とされていた面接で家族に関することや恋人の有無、結婚の予定、尊敬する人を尋ねる行為も、不適切と考えられるようになった。

 履歴書にも変化が見られる。昨年7月には、日本規格協会が性別や顔写真欄があるJIS規格の履歴書様式例を削除し、12月には文房具やオフィス家具の製造・販売を行う「コクヨ」が性別欄のない履歴書の販売を開始した。なお、アメリカでは顔写真欄がないのは一般的であり、昨今は日本でも「履歴書に顔写真は不要ではないか」との声も大きくなりつつある。

 時代に沿って「当たり前」は変わっていく。慣習に従うだけでなく、時代の流れを汲みながら採用方法を見直す必要があるだろう。

 大阪労働局では「就職差別につながるおそれのある不適切な質問の例」が具体的に紹介されている。

履歴書の写真欄が差別を助長しているたくさんの証拠

履歴書から写真欄もなくそう 履歴書に性別を記入させることにともなう差別をなくそうと声を上げた人たちによる「履歴書から性別欄をなくそう」という署名活動…

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「明治」で体重・ウエスト・既往歴を尋ねる採用面接 「古い慣習」「モラル疑う」と批判集まるの画像2 ウェジー 2020.10.06

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