「懐かしい」と「新しい」という感性を融合させたコンセプトの筆記具SAKURA craft_labが発表されたのは2017年9月。場所は、関西では有数の文房具の展示会「大阪文紙メッセ」の会場内に設けられた特設ブースでした。
多くの文具メーカーが首都圏を中心とした展示会などで、新製品の発表を行うことが多い中、地元大阪の文房具メーカーである株式会社サクラクレパス(以下サクラクレパス)は、コロナ禍の影響で中止になった2020年を除き、すべてここ「文紙メッセ」の会場でお披露目をしてきました。
サクラクレパスらしい筆記具を創ろうというプロジェクトから生まれたSAKURA craft_labは、大人の筆記具として発表と同時に大きな反響を呼びました。そして、2019年にSAKURA craft_labシリーズはじめての多機能ペン「SAKURA craft_lab004」が発売になりました。

シャープペン+ボールペン×2

シャープペンシル0.5mmとボールペンの筆記見本
SAKURA craft_labはトータルのコンセプトと平行して、それぞれのシリーズにも独自のコンセプトを追求しています。「1本の編集者」を謳ったSAKURA craft_lab004は、さまざまな情報が溢れた現代において、みずからが取捨選択して必要なものだけを編纂するために、過剰な装飾を排除し、思考を妨げないシンプルさを求めた結果、基本をしっかりとおさえた0.5mm芯のシャープペンシルとブラックとレッドのゲルインキを搭載したオーソドックスなスタイルにたどりつきました。

SAKURA craft_lab 001を継承する004
2017年に発売されたSAKURA craft_lab001(写真上)と004を並べて見ると、中央のクロスローレットを除けば、デザインもサイズも瓜ふたつ。004の方が全長で約2mm、軸径が0.4mm大きくなりましたが、重量は逆に7g軽量化されています。
SAKURA craft_lab001はブラックを基調とした、ブルーブラック、ブラウンブラック、ボルドーブラック、グリーンブラックからなるインクのバリエーションでしたが、1本の軸に3本分の機能を盛り込んだことで過去のレフィルとの互換性はなくなりました。しかし、新たにSAKURA craft_lab004専用のブルーブラックとクリムゾンレッドの2色が用意されたので、スタンダードなインク以外のカラーバリエーションを楽しみたい人にはそちらの利用が可能です。
また、独特なデザインのメガネ型クリップも健在で、頭冠を飾るサクラクレパスのシンボルのサクラマークと合わせて、SAKURA craft_lab001のDNAを継承しながら、これ1本あれば仕事を完結させることができるほどの筆記具へと進化したのがSAKURA craft_lab004といえるでしょう。

アナログ感あふれる回転式多機能ペン
SAKURA craft_lab004の見た目の大きな特徴のひとつ、中央に配置したクロスローレットは、「ここをつまんで回転させれば筆記することができる」と誰かに教わった訳でもなくとも、自然に操作してボールペンやシャープペンシルを機能させることが出来ます。またクロスローレットを右へ回転させると、ボールペン(ブラック)、シャープペンシル、ボールペン(レッド)と必ずそれぞれのポジションで1度固定されるので、自分が使いたい機能がオーバーランしません。

見えない高級感
オーソドックスでシンプルなデザインに目が奪われがちなSAKURA craft_lab004には内に秘めた特徴も備えています。サクラマークの天冠の内側にある消しゴムもそのひとつ、一般的な白い消しゴムではなく、汚れが目立ちにくいシックな黒色の消しゴムは、文字を消す際にも本体の質感を損なわない上品さを持ち合わせています。
また、ローレット加工を施した頭冠を回すと、はじめは少し負荷を感じますが途中から抵抗が軽くなりすっと外れる仕様は、外見からはわからない高級筆記具の使い心地の良さも魅力です。

素材にもこだわった質感の魅力
高級筆記具と呼ぶに相応しい「見える質感」と、「見えない素材」にもこだわりが込められています。クロスローレットを境にして、ペン先へ向かう下軸と頭冠へ続く上軸は見た目からも、あきらかに質感が異なる事がわかります。上軸には、カラーアルマイトにヘアライン加工を施した上質な質感に加えて、傷が目立ちにくいというメリットを備えています。
また、下軸はボディカラーのラインナップ4種類に対してすべて同一素材ではなく、#49エボニーブラック(写真)と#30ボトルグリーンには真鍮を、#22ガーネットレッドと#44アッシュグレーには、銅、亜鉛、ニッケルからなる化合物「洋白(ようはく)」を使用して2つの質感を楽しめます。
どちらも、比重の軽い素材を上軸に、比重の重い素材を下軸に配置する事でバランスの良い筆記感を提供してくれています。
あまり耳馴染みのない「洋白」という金属は、身近なものだと500円硬貨が同じ原材料から作られています。ただし、配合比がわずかに異なるため造幣局ではニッケル黄銅と呼称しています。
愛される多機能ペンSAKURA craft_lab004
InstagramなどのSNSで、手帳と一緒にSAKURA craft_labが寄り添っている投稿写真を見る度に、多くの文房具ファンから愛されている筆記具だという事が伝わってきます。
日本では低価格な多機能ペンは数多くありますが、大人を満足させてくれるものはそう多くありませんでした。そんな中で仕事やプライベートでも遜色なく使えて、実用性と所持することの充足感を満たしてくれるSAKURA craft_lab004は、多くの人が待ち望んでいた多機能ペンだったのではないかと思います、かく言う私も欲して止まなかったそのひとりでしたから。
製品データ
サクラクラフトラボ004
・ボールペン径0.4mm
・シャープ芯径0.5mm
・全長133mm/軸径10.9mm
・重量27g
・カラー
(#44アッシュグレー/#22ガーネットレッド/#30ボトルグリーン/#49エボニーブラック)
・価格8000円(消費税別)
(出雲義和)