BTSが音楽番組から消える? コロナ禍で進行しているK-POP産業の大変化

文=菅原史稀
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Getty Imagesより

 BTS、TWICE、BLACKPINKなどのグループが世界的に人気を拡大しているK-POPシーン。しかし、2020年は新型コロナウイルスによって深刻な影響を受けた。

 BTS、TWICE、SEVENTEEN、SUPER JUNIOR、Red Velvetなどのグループは昨年予定されていたワールドツアーを含む公演の中止を余儀なくされ、甚大な金銭的損失を被ったとみられる。

 ツアー中止のほか、発売記念ショーケースや音楽番組が無観客での収録といった措置がとられるなど、新曲リリースにおけるプロモーションの活動形式も様変わりした。通常ならばアーティストの歌声とともに聞かれるファンの歓声がない“カメラリハーサル”のような収録のなかで新曲が発表されている様子は、何とも淋しい印象を与えるものである。

 しかし一方で、昨年はアルバムセールス数を伸ばしたアーティストも多く、むしろ“2020年はK-POPシーンにおいて空前のヒット作ラッシュだった”という声も上がっている。

 韓国の音楽チャート・ガオンチャートの発表によると、2019年にK-POPシーンから輩出されたミリオンセラー作はBTSの『MAP OF THE SEOUL:PERSONA』のみだったのに対し、2020年にはBTS『MAP OF THE SEOUL:7』『BE』、BAEKHYUN『Delight』、SEVENTEEN『Heng:garae』『;[Semicolon]』、NCT『NCT 2020 RESONANCE,PT.1』、そしてBLACKPINK『THE ALBUM』と複数のミリオンヒット作品が誕生した。

 前年に比べ音源販売の売り上げが増加した現象について、ガオンチャートのキム・ジヌ研究委員は、近年K-POPシーンが獲得してきた海外ファンの拡がりと新型コロナウイルスがもたらした影響が合わさって生まれた結果だと分析している。キム氏によれば、K-POPファンダムが全世界的に展開されるなか、ワールドツアーの中止などによりファン活動の断念を余儀なくされた海外ファンの消費欲求がアルバム購入に集中したのではないかというのだ。(参照リンク

 またK-POPシーンにおける音源販売に大きく貢献してきたサイン会や握手会が、ビデオ通話によるオンライン形式、通称“ヨントン”へとシフトチェンジしたことも海外販売量の増加へ繋がったとする見方もある。

 これまで主に韓国内で開催されてきた対面形式のサイン会・握手会から、ネット環境が整えばスマートフォンひとつで世界中どこからでも応援するアーティストとコミュニケーションを図ることのできるオンライン形式となったことで、海外ファンの参入障壁を下げた。

 このようにK-POP産業がコロナ前に展開してきた経営戦略と文化的施策、そしてコロナ禍においてみせた迅速かつ柔軟な対応策は、シーンにポジティブな変化をもたらしている。

 例えば、昨年「Dynamite」そして「Life Goes On」で米ビルボードHOT100のシングルチャートにおいて首位を獲得する快挙を成し遂げたBTSは、アメリカの人気番組『The Tonight Show』(NBC)や「2020 The American Music Awards」、そして『THE MUSIC DAY〜人はなぜ歌うのか?〜』『ベストアーティスト2020』(ともに日本テレビ系)といった日本の音楽特番と海外の音楽番組へのリモート出演も活発だった。

 その際のパフォーマンス映像におけるクオリティの高さも視聴者の目を惹くものだったが、この映像を監修したのがZanybrosという制作会社だ。ZanybrosはこれまでBTSを含む多くのK-POPアーティストによるMVを手がけ、MV制作を専門とするプロダクションとしてK-POPファンから知られているが、この局面でMV制作のノウハウを駆使し新たなフィールドへ参入することにより、音楽番組におけるパフォーマンス映像の可能性を拡げているのだ。

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