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1月8日、急増するコロナ感染者数と医療崩壊に慌てふためいた菅義偉首相は、小池百合子東京都知事らの要請に押し切られる形で、一都三県(13日に7府県を追加)の緊急事態宣言を再発出した。
冬期における新型コロナの蔓延は既に昨年夏頃から予想されていたにもかかわらず、政府は対策を怠っただけでなく、あろうことかGo ToトラベルやGo Toイートなど、むしろ感染拡大を招くような施策を実施した。その結果が現在の医療崩壊、感染爆発を引き起こしているのだから、今回の感染増加は、まさしく無能な政府によって引き起こされた人災と言う他はない。
さらに、感染率が格段に高いとされるコロナ変異種の発生も明らかになり、政府は全世界からの入国拒否を宣言(韓国や中国など一部地域を対象としたビジネス関係者の入国緩和策も一時停止に)。これで海外から数百万人の人々の往来が発生する東京五輪の中止は、もはや誰の目にも明らかになった。
東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長や武藤敏郎事務局長は否定しているが、あとは「いつ・誰が中止宣言をするのかを待つだけ」という状況になっている。
もう国民の支持はない
東京五輪は、すでに国民の支持も失っている。1月9〜11日に実施されたNHKの世論調査で東京オリパラについて聞いたところ、「開催すべき」が16%、「中止すべき」が38%、「さらに延期すべき」が39%だった。12月に比べて「開催すべき」は11ポイント減り、「中止すべき」と「さらに延期すべき」はいずれも7ポイント前後増加し、合わせて77%になった。
また、同じ頃に実施されたTBS(JNN)の世論調査でも、オリパラは開催出来ると思うかどうかの問いに「開催出来ると思う」は13%(前月比―15ポイント)、「開催出来ると思わない」(前月比+15ポイント)は81%となり、圧倒的な差がついた。
NHKはじめ複数メディアは世論調査で未だに「再延期」という選択肢を設けているが、これについては組織委もIOCも再延期は絶対にないと明確に否定しているのだから、もう選択肢から外すべきだ。TBSの調査は二択(答えない・わからないを含めれば三択)なので、より正しい民意が反映されると言って良い。
両調査で開催反対の数字は8割近くに達しており、もはや東京五輪は完全に国民の支持を失っている状況だ。3月下旬には聖火リレーの開始が迫っているが、それまでに緊急事態宣言が終了して世論が再び開催支持になるのは不可能に近い。
現時点での五輪中止根拠を列挙する
では、現時点での中止根拠を列挙してみよう。これにはリアル面とマインド面がある。
リアル面
1) 緊急事態宣言期間内は、国内選手の練習、代表選考会が実施できない、または困難
2) 組織委もほとんどがテレワークとなり、準備作業が進まない
3) NBCの放送クルー及び世界各国からの放送クルーが入国できず、準備作業ができない
4) 欧州各国も再ロックダウン中であり、選手は満足な練習も代表選考も出来ない
5) 外国人選手の早期入国が出来ないため、事前キャンプもホストタウン事業も出来ない
6) 現時点でも、観客・入場者数をどうするか決まっていない
マインド面
1) 五輪開催は無理とする世論が8割近くにのぼり、もはや国民の支持が消滅している
2) 組織委や政府の五輪開催発言があればあるほど、逆に国民の反発を招いている
3) 巨額の出費が明らかになり、そのような予算があるのならコロナ対策に回せという世論が高まっている