東京オリンピック「再延期」は不可能。政府・組織委の広報失敗、連発される「精神論」

文=本間龍
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 五輪が急速に国民の支持を失ったのは、新型コロナ感染者数の急激な増加や緊急事態宣言などによる心理的な影響が大きいのは言うまでもないが、際限のない開催経費の膨張も、マイナスの印象を与えていると考えられる。

 昨年の12月4日、1年延期されていた東京五輪の新たな開催費(V5)が発表された。大会延期や新型コロナウイルス感染症対策に伴う追加経費は2940億円(東京都1200億円、国710億円、組織委1030億円を負担)となり、大会経費は延期前の1兆3500億円から1兆6440億円に増加した。

 この金額はすでに、過去の夏季五輪史上の最高額であるが、これはあくまで本大会の実施にかかる費用であり、様々な関連経費はここに含まれていない。2019年12月に会計検査院は、2013年から19年までに使われた五輪関連費は約1兆600億円と指摘しており、東京都が会場周辺及び道路整備などに支出した8500億円などを足せば、その総額は約3兆4千億円以上と、さらに途方もない金額になる。

 しかも、上記の1兆6440億円は最終確定金額ではない。コロナ対策費として計上された約1000億円はごく基礎的な数字であり、大会の際の入国者数がどの程度になるか分かっていないため、さらに膨れあがるのは避けられない。しかも、11万人を超えるボランティアのコロナ対策費は全く計上されていないのだ。

 また、大会実施のためには5000人以上の医師や看護師が必要とされる。組織委はそれらも無償ボランティアで賄いたいと発表したが、強烈な批判にさらされて、予算措置を講じることになった。長引くコロナ禍で、ただでさえ医療関係者は疲労、困窮している。自らは高額給与をもらいながら、タダで医療行為をしてくれとは、組織委のずうずうしさも目に余るというものだ。

精神論しか言えない開催派

 組織委の武藤事務総長はこの予算発表時に「我々はできる限り予算を削減し簡素化の努力をしている。高いと見るのかどうかはいろいろな見方があるが、ポジティブな投資という面が相当あるのだと思う」「ひとつのスタンダード、ロールモデルを示す上で意味がある」「国民にもご理解いただきたい。我々としても推移を見守り状況に応じて対応したい」などと発言してひんしゅくを買った。

 既に2兆円近くの税金を投入している状況で、延期に伴いさらに2000億円の追加経費発生を「ポジティブ」に捉える国民はほとんどいないと思われるが、さすが元大蔵省出身者は税金の使い道には鷹揚らしい。

 だが、森会長はその上をいく。1月7日のスポーツ紙インタビューで「不安はまったくない。(五輪を)やることは決まっているし、準備はほとんど終わっている。どうして7月のことを今議論するのか」と言ってのけて、さらに強い反発を招いた。

 そして橋本聖子五輪相は8日、「世界が直面するあらゆる課題を解決すること、課題解決の先進国だとしっかりと示していくことが重要。希望の灯火としてスタートできるよう、感染症対策を講じながら、聖火が全国を回れるように努めていきたい」などと、まったく空気を読めていない発言を行った。

 感染爆発の前になすすべもなく緊急事態宣言発令となったのに、なぜ「課題解決の先進国」などと言えるのか謎だし、そもそも緊急事態下で外出規制をかけている最中に、人が集まる聖火リレーをなぜやれるのかという、当然の疑問にまったく答えていない。この三者は精神論ばかりで、コロナ禍では安全な五輪開催など出来ないのではないか、という国民の疑問に、誰も答えられていないのだ。

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