LGBTとフェミニズム運動が共に闘うということ

文=遠藤まめた
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 2017年3月に「トランス男子のフェミな日常」の連載をはじめて、約4年が経過した。連載をはじめた当初は、トランスジェンダーをとりまく様々な課題とフェミニズムとの関わりについて語る人はまだまだ少なかった。また、主流LGBT運動でも性差別の視点はおきざりにされがちだった。

 私がこの連載をはじめたのは、2016年秋に髙橋まつりさんを過労死させたばかりの電通に、経済主導の主流LGBT運動の人たちが「LGBTがもっとも働きやすい職場」の賞を送ってしまったことがきっかけだ。彼女がセクハラ・パワハラに苦しみ、死に追い込まれたことはまるでなかったことみたいに扱われ、「LGBTフレンドリー」という言葉は企業に花を持たせるためのものに値下げされた。

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LGBTとフェミニズム運動が共に闘うということの画像2 ウェジー 2021.01.14

 そのイベントでは、一流企業に勤めるスーツ姿のゲイ男性たちの集合写真が飾られる予定だった。写真のタイトルは「ゲイエリート」。男性中心主義社会からはじかれる女性やトランスジェンダーや、スーツという性別二元論的な服装になじめない人、エリートではない人たちはこのままいくと救われそうになかった。だから、それまでもほそぼそとフェミニズム運動に関わっていた私は、2017年からフェミニズムについての発言を増やすことになった。

 2021年の現在、トランスジェンダーとフェミニズムに関する話題はインターネット上でふきあがっている。それも4年前には想像できなかったような形で。トランスジェンダーによからぬ感情を持っているシス女性たちはLGBTの運動が性差別解消の運動とどう結びつくのか、どう連帯できるのか、見当がつかないでいる人も多いように感じる。普段、多様な性について市民講座をしていると、男性と女性のほかに、第三の性別としてLGBTがあると認識している人と多く出会うが、そのような感覚を抱いているのではないか。

 実際には一口にLGBTといっても、たとえば同性愛の男性と女性では直面している課題は異なるし(レズビアンは同性愛嫌悪と女性差別の両方を経験する)、トランスジェンダーも性別移行の前と後で、男として扱われることと女として扱われることのギャップを経験する。女性とひとくちでいっても異性愛の女性、同性愛の女性、かつて別の性別で暮らしていた経験を有する女性がいる。女性差別を経験するトランスジェンダー男性もいる。

 このあたりの整理がつかないままで、女性を単に一枚岩の存在として捉えようとすると論理は破綻するので、シスジェンダーや異性愛の女性の権利回復にしか関心のない人たちは、ジェンダーやセクシュアリティの多様性にいらだちを覚える。今はトランス女性が主に攻撃されているが、運動史の中にはかつてレズビアンが排除されたこともあった。4年前の私が今日の現状を想像できなかったように、4年後にはオンラインではレズビアン排斥運動が起きているかもしれない。トイレや温泉の安全性を損ねるとか言って。

 ただ、フェミニズム運動がLGBTの運動によって恩恵を得ている部分はこの数年でもかなりある。たとえば性別によらずスカートやズボンを選べる「制服選択制」は、トランスジェンダーの切実な訴えにより各地で導入が進みつつある。トランスジェンダーの子どもだけでなく、すべての子どもが、性別による「らしさ」のおしつけから少しでも自由になれるよう恩恵を享受している。

 パンテーンは昨秋、トランスジェンダーを起用したCMを制作し、画一的な就職活動のスタイルに疑問を投げかけたが、このようなCMに勇気づけられたのはトランスジェンダーの就活生に限らなかっただろう。女性にのみパンプス着用の義務づけを行うことに疑問を投げかけた#KuToo運動と同様に、性別にもとづく役割をみなおす重要な問いかけとなっている。LGBTの運動によって、同性間でも性暴力がおきることの認知も広まりつつある。同性間の性暴力は、加害者が同性愛者とはかぎらないし、被害者が同性愛者とも限らない。より多くのサバイバーが救済される方向へ世の中は動きつつある。共闘ポイントを見つけることが重要であるように私は思っている。

 この連載は4年目をむかえた節目で、今月末にいったん終える予定だ。トランスジェンダーとフェミニズムについては、今日ではたくさんのことが語られ「トランスフォビアへの抵抗とトランスインクルーシブなフェミニズムのためのリソース集」というアーカイブもできている。増えてきたことばと同じだけ、今後は共闘の現場を増やしていきたい。

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