菅政権がはまった3つの落とし穴。就任からわずか3カ月で支持率は「危険水域」に

文=斎藤満
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Getty Imagesより

新春箱根駅伝の暗示

 今年の新春箱根駅伝は、いかにも菅政権の行方を暗示するものとなりました。菅義偉総理の母校・法政大学はスタートの第1区で予想外の区間賞をとり、トップで第2走者にタスキを渡しました。ところが、2区以降で急激に失速し、往路16位、総合17位に終わり、次回へのシード権も逃しました。

 昨年9月に発足した菅政権はいきなり60%を超える高い支持率でスタートしましたが、わずか3カ月後の12月には、一部の世論調査で不支持率が支持率を上回るなど、支持率が急落しました。年明けにはさらに支持率が低下しています。不支持の理由の第1に「リーダーシップがない」が上がっています。

 世論調査によると、菅政権のコロナ対応について、約3分の2が「支持しない」と答え、緊急事態宣言の発動には8割近くが「遅すぎた」と答えています。コロナの感染抑制策についてはすべてに「後手に回った」との評価がついています。「経済と感染抑制の両立」を目指したものの、結局「二兎を追う者は一兎をも得ず」に終わり、感染の放置が却って経済の犠牲を大きくしてしまいました。

五輪中止なら早期退陣

 総裁任期は今年9月までで、衆議院の任期は10月までです。従って、今年の秋までに衆議院選挙を行う必要がありますが、与党内には菅総理では選挙に勝てない、との不安が広がっています。少なくとも50議席を失い、単独過半数を失うとの懸念も聞かれます。

 菅総理やIOC(国際オリンピック委員会)の役員、米国スポンサーは何が何でも五輪をやりたいと言いますが、新型コロナの感染拡大が止まりません。国内の世論調査でも、予定通り実施すべきとするものは2割にも届きません。IOCはこの2月か遅くとも3月には決断しなければなりませんが、ワクチン供給の遅れもあり、それまでに世界のコロナ感染が収まっているとは考えにくい状況です。

 来年には北京で冬季五輪の開催が予定されているので、再延期は困難です。IOCが東京五輪の開催中止を決めれば、開催にこだわる菅政権、並びに小池百合子都知事には大きな打撃となります。五輪中止がまさに菅政権の「ご臨終」につながる可能性が高まっています。

 菅政権は3つの「落とし穴」にはまりました。

コロナ軽視の落とし穴

 1つは、菅政権がコロナ軽視の落とし穴にはまったことです。後手後手の対応が続いたこともあり、都市部を中心に感染拡大が止まりません。現在は2月下旬の接種開始に向け準備が進んでいるワクチンに頼らざるを得ない状態です。

 コロナの感染を軽視し、医療崩壊をもたらし、国民の生命財産を守るという基本的な政府の役割を果たせないとの不安が広がっています。これで内閣支持率が急落しました。経済と感染防止の両立と言いながら、感染拡大を抑えられず、結果的に経済への負担も大きくしてしまいました。コロナ対応を誤ったツケが菅政権に大きくのしかかっています。

反論封印の落とし穴

 こうした政府の対応に「ものをいう批判勢力」がいません。否、安倍晋三首相時代に総理官邸が人事権を握ったことで、官僚からも与党内からも批判、反論を自ら封印してしまいました。

 そのために、国民の間にコロナ不安が広がり、危機感が募る中でも、政府は携帯料金の引き下げやアフター・コロナ向けのはずだった「Go To」キャンペーンを続けました。感染拡大を放置する「ピンボケ」策に忠告する人がいません。

 これは菅総理が官房長官時代に自ら墓穴を掘ったもので、自分で作った落とし穴に自らハマってしまったことになります。自民党内でも、かつての派閥間の論争、異論が出なくなり、「安倍一強」時代の弊害が目立つようになりました。日本学術会議の任命拒否は、政府批判を排除する体質の象徴ともいえる出来事でした。

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