菅政権を危機に陥れた三つめの落とし穴が、安倍政権の継承です。7年8カ月も続いた安倍政権は、政治の私物化など、年々腐敗が進み、国会での虚偽答弁も国民周知の事実となりました。これをそのまま継承したのが菅政権でした。
米国では2期8年続いた政権に対して、次の政権は前政権を批判し、これをアンチテーゼとして新政権の推進力にしてきました。比較的評価の高かったオバマ政権も8年のうちには金属疲労が見られるようになりました。そこでトランプ氏はオバマ政権をとことん批判し、その成果を破壊しました。オバマケアの否定にとどまらず、パリ協定、イランの核合意、TPPなどからも脱退しました。
オバマ大統領も前任のブッシュ氏を批判し、イラク、アフガニスタンから兵を引き揚げ、米国大統領としては初めて被爆地広島を訪れました。前政権と違うことをするのが、ある意味では新政権のエネルギーになります。日本でも小泉政権が「自民党をぶっ壊す」といって多くの支持を得ました。
ところが、菅政権は与党内からも「飽き」が指摘され、腐敗が進んだ安倍政権をそのまま継承してしまいました。これが短期間での支持率低下につながる一因になっています。本来なら前政権とは異なる色を出したいところですが、安倍前総理や二階俊博幹事長に押されて総理の座を得た菅氏には、これを否定することができない限界がありました。
危機の宰相待望
関西、中部を含め、緊急事態宣言を11の都府県に拡大した1月13日の記者会見では、目が泳ぎ、たびたび言い間違いを犯しました。総理はかなり動揺し、浮足立っているように見えました。
現政権で今のコロナ危機を乗り切るのはかなり難しいと感じられます。レイムダックのまま政権を維持するより、危機に対応できる強いリーダーの登場が待望されます。
永田町では石破茂元幹事長待望論が聞かれますが、危機に直面する中では思いもよらない若い、エルネギッシュなリーダーが現れることがあります。これまでの経歴にとらわれることはありません。
(斎藤満)
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