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1月19日の放送『クローズアップ現代+』(NHK)で、二階俊博幹事長が新型コロナウィルスの感染防止に関する取材に応じた。
1月13日に更新されたNHKの世論調査では、内閣支持率が初めて「支持」(40%)を「不支持」(41%)が逆転し、自民党の新型コロナウィルスに対する対応に不満を抱いている国民が増加している。だが、国民の政権への評価をどのように考えているのか問われた二階氏は、「みんなやり場がないんですよ、この今の状況を」「どこにぶつけていきますか? 野党の某政党に『責任はお前の政党にあるよ』と言っても、しょうがないじゃないですか」と楽観的な回答。新型コロナウィルスの影響で打撃を受けている国民が、やり場のない怒りで八つ当たりしているだけと捉えているようだ。
政府が講ずるべき対応策について聞かれても、「他の政党が何ができますか? 他の政治家が何ができますか?」と野党を見下すような発言をしたかと思えば、「今、全力を尽くしてやってるじゃないですか。いちいち、そんなケチをつけるものじゃないですよ」と逆ギレ。
また、「GoToトラベル」キャンペーンの対応の一貫性や施行のタイミングなどについては「後からなら、誰でも何でも言えるわけです」。続けて、「こういう事態になったから、これは誰彼と言っている暇はないんだ。みんなでこの事態を乗り越えていく、国民の英知ですよ」とメッセージを発した。
全国旅行業協会会長の二階氏だが、“みんなで乗り越える”“国民の英知”と言いながら、利権と無関係な世論に耳を傾ける気はどれほどあるのだろうか。そもそも昨年の「GoToトラベル」が始まる直前、朝日新聞社が7月18日~19日に実施したアンケートでは、「GoToトラベルに反対する」回答が74%と賛成派を上回っていた。そんな声を一切聞かずにスケジュール通り「GoToトラベル」は始まったのである。
日本医師会の中川俊男会長は「『GoToトラベル』自体から感染者が急増したというエビデンスはなかなかはっきりしない」としつつも、「キッカケになったことは間違いないと私は思っている。感染者が増えたタイミングを考えると関与は十分しているだろう」と見解を示している。
現在、東京など複数の地域が2回目の緊急事態宣言下にあるが、街から人出はほとんど減っておらず、不要不急の外出をしているのは若者だけではない。一方で多くの飲食店は午後8時までの営業時間短縮に従い苦境を強いられている。コロナ流行が収まる気配は全くないままだ。この混乱を、「仕方ない」「みんなで頑張ろう」で片づけられるはずもないだろう。
だが二階氏は、感染拡大を防ぎなら経済を回すため、どのようなバランスをとるべきかについても「それは大変難しい課題ですよ。難しいから今日、こういう状況になっている」とまるで他人事。
さらには、「経済もしっかりやっていかなければ、みんなが生活に困窮するようなことがあったのでは、余計に健康にも害するわけです」「自民党はその期待、今こそ力、底力、今までの経験の積み重ねを、今国民の皆さんにお示しすべき時だと思っています」と意気込みを語ったが、具体的な方針や対策は語られなかった。
同じく19日、麻生太郎財務相は、国民への「一律10万円給付」を今後するつもりはないと話した。コロナ前と収入が変わらず逼迫していない家計も確かにあるだろうが、一方でコロナ禍によって困窮を余儀なくされた世帯も確実にあり、この状況が長引くほど困窮世帯は増えていく。そうした現状が政権幹部の視界に入ることはないのだろうか。もはや自民党の支持率が下げ止まることはなさそうだ。