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コロナ禍によって停滞していた2020年の韓国映画界だが、その起爆剤・救世主となったのは、間違いなく『新感染 ファイナル・エクスプレス』(16年)から4年ぶりとなる続編『新感染半島 ファイナル・ステージ』(20年)だろう。K-POPならぬ、K-ZOMBIE人気が世界を席巻したわけだが、そんな『新感染半島』を超えて年間興行収入No.1となったのが『KCIA 南山の部長たち』である。
表向き「実話を基にしたフィクション」ではあるが、1979年10月26日に起こった「パク・チョンヒ(朴正煕)大統領暗殺事件」を題材にした、韓国映画界ならではの意欲作だけに、十分納得のいくNo.1といえるだろう。原作はキム・チュンシクによる同名本だ。
タイトルにもなっている「KCIA」とは、大韓民国大統領直属の諜報機関として機能していた「中央情報部」の通称。「韓国版CIA」という名が示す通り、主な任務が北朝鮮工作員の摘発ということ以外、ほとんどが謎のベールに包まれている。
その組織を束ねる者は、その庁舎の所在地から“南山の部長”と呼ばれ、泣く子も黙る存在として国民から恐れられていた存在だ。そんなKCIAのトップが、1961年に軍事クーデターに成功して以降長年に渡って絶大な権勢を振るってきたパク大統領を暗殺した。
『KCIA 南山の部長たち』は、犯人の8代目部長キム・ジェギュ(金載圭)が「10・26事件」へと至る過程や、金本元一の日本名も持っていたキム自身の実像に迫っていく。
パク大統領の暗殺は世界に衝撃を与えた事件だけに、じつは2005年にも、キム部長をペク・ユンシク、その部下にあたる課長をハン・ソッキュが演じたイム・サンス監督作『ユゴ 大統領有故』(2005年)で映画になっている。韓国公開の際には、パク大統領にまつわる冒頭約4分の映像が黒く塗りつぶされたことでも話題になった『ユゴ』だが、どちらかといえば、宴会中に起こった事件そのものに焦点を絞ったうえ、ちょっとブラックコメディ風味。
その一方、今回の『KCIA』では最終的にパク大統領に裏切られてしまうキム部長の苦悩と葛藤など、登場人物たちの感情面がフォーカスされており、イ・ビョンホンが圧倒的な説得力をもった芝居で、キム・ギュピョンと改名されたキム部長を演じている。
監督を務めたのは、ビョンホンと『インサイダーズ/内部者たち』(2015年)でも組んだウ・ミンホ監督。ソン・ガンホを主演に迎えた前作『麻薬王』(2018年)では、実在の密造密売業者イ・ファンスンをモデルに、まさに「輸出こそが愛国」だったパク政権における裏側を描いたが、ガンホやロビイスト役のペ・ドゥナの好演、作品の出来に反し、興行的には失敗に終わってしまった。
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