性暴力被害者のうち警察に相談したのは17% 5899件のアンケートから見えてきた「性暴力被害を相談しやすい社会」のために必要なこと

文=雪代すみれ
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被害を被害と認識できるまでにかかる年数は平均7年

 また、前述のように13歳未満では当時は「良く分からない状態だった」との回答が多いが、「現在の刑法では親の恋人、親族から被害を受け、数年経過した場合には事件として推定することが難しい場合があります。そのため、現在の監護者性交等罪の監護者に加え、親の恋人や親族を加えることを検討する必要があるのではないでしょうか」と西田さんは話す。

 今回のSpringの調査からは、被害に遭った後、被害を被害だと認識できるまでに時間がかかることも明らかになった。特に「挿入を伴う被害」で被害とすぐに認識できなかった人が多く、さらに、すぐに被害だと認識できなかった場合、認識できるまでにかかった平均年数は7.48年であった。

 オンラインで登壇した目白大学の齋藤梓専任講師は「子どもの頃の被害が多かったため、被害を被害と認識するまでに時間がかかったのではないか。また、見知った人からの被害が多かった点についても、(レイプは)ある日道端で突然襲われるようなイメージを持っている人が少なくないため、認識が遅れたのではないか」と考察する。

 被害記憶については、約2割が「一部もしくはすべての記憶をなくしていた、あるいは思い出せなかった時期がある」と回答。記憶が戻るまでに11年以上要しているケースも少なくない。

 挿入を伴う被害について、記憶を喪失していた人で記憶が戻るまでにかかった日数の平均が10.8年であった。現在の日本の刑法では強制性交等罪の公訴時効は10年であるため、被害を認識できない、あるいは記憶が戻る前に、公訴時効が過ぎてしまう場合があることが見えてくる。

「被害者も加害者も傍観者も生まない社会のために」

 身近な人に被害を打ち明けたことがあるかについては、6割が「はい」と回答。一方で、警察に相談したことがあるかについては8割以上が「いいえ」と回答しており、警察への相談のハードルの高さが見える。

 また、相談した2割弱の人に刑事手続きがどうなったかを尋ねたところ、挿入を伴う被害208件のうち、被害届が受理された人が半数で、検察で起訴されたのはわずか9件だった。起訴されたうち8件は有罪になっているものの、裁判までいく被害は本当にごくわずかであることがわかる。

 被害を周りの人や警察に相談しやすくするためには「性暴力被害者に対する社会の認識や意識の変化が必要」「教育や啓発が必要」「警察や法制度の変化が必要」といった意見が多数見られた。オンラインで登壇した東洋大学の岩田千亜紀助教は「警察や専門家への相談体制の整備や、被害に遭った後の生活支援の充実、被害者を責めない社会であることも重要」と話す。

 Spring代表の山本潤さんは「被害者も加害者も傍観者も生まない社会のために、性教育や人権教育を行い『何が性暴力なのか』教えていくことが必要。まだ、警察へ相談に行ったものの『あなたの経験は被害ではない』と門前払いされることもあると聞く。一人ひとりの警察官の認識を変えていくためにも不同意性交等罪(同意のない性行為は性暴力)が必要」と述べた。

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