
『自分をもっと好きになる 【ハピかわ】かわいいのルール』(池田書店)
1月22日放送の『グッとラック!』(TBS系)で紹介されたある本がTwitter上で物議を醸している。
番組で紹介されたのは『自分をもっと好きになる 【ハピかわ】かわいいのルール』(池田書店)。マナーや仕草、ファッション、コミュニケーションなど“ステキ女子計画”を4つのジャンルに分け、漫画やイラストを用い“すてき女子の新常識”として解説するマナー本だ。
番組が小学生に話を聞いたところ<いろいろ書いてあって勉強にもなる><マンガなのにためになる! みたいなところがすごく魅力だと思います>と大人気の様子。売り切れ続出で、重版がかかっているという。
番組では本書の具体的な内容を紹介。例えば、転校生と初めて話すときの会話のきっかけとして、①血液型や星座、②好きな芸能人、③相手のスキなこと・得意なこと、④相手の持ち物に注目するといいとのアドバイス。他にも「元気がない友達にどう声をかけたらいいか」「学校のルールを破った友達の誘いの断り方」「『さ行』でほめるあいづち」などが書かれている。
スタジオでは、国山ハセンアナが<結構大人でも参考になるようなことがありましたね>とコメント。アンミカ氏も<共感しました、断るときはしっかり、でも最後にフォローとか実社会で使えますもんね>と絶賛した。
ネット上でも、「うちの娘に買いたい」といった肯定的な声が見られる一方で、「マナーは男子でも身につけた方がいいのに、なぜ“ステキ女子”なの?」「キャバ嬢の指南書かな」「マナー本なのに“かわいい”と形容していることに疑問」「小学生の時点でこんな同調圧力をかけれられるなんて……」など否定的な意見も多々ある。
小学生女子に“モテ指南”で炎上した『おしゃカワ!ビューティー大じてん』
同様の本が問題視されるのは今回が初めてではない。
昨年5月頃、小学生女子をターゲットとした、『おしゃカワ!ビューティー大じてん』(成美堂出版、2018年発売)の内容がTwitter上で物議を醸した。同書には「ナミダぶくろの作り方」「ツヤサラ髪の作り方」など大人向けファッション誌と同じような特集や、モテ女子になるための方法として「オウム返し」や「さしすせそ」で男子をホメることが推奨されていた。
これらの内容にTwitter上では、「小学生女子に人に媚びて生きていく方法を刷り込むの気持ち悪い」「“男子から好かれないと女としてダメ”というメッセージを子どもに植えつけるな」「メイクやオシャレを『モテのため』と教えるのは呪い」など批判が噴出。
『自分をもっと好きになる 【ハピかわ】かわいいのルール』は“モテ”を押し出した本ではないものの、「ステキ女子として○○でいなければならない」といったメッセージが打ち出されている。次に例を挙げる。
<ついつい適当になりがちなそうじの時間。そんなときこそステキ女子の力の見せどころ!>(p38)
<ツヤツヤでさらさらのキレイな髪はステキ女子のキホン♪>(p100)
女子は「しっかり」「外見に気を遣う」ことを求められる
タイトルに使われている「かわいいのルール」、本書で何度も使われる「ステキ女子」という言葉はジェンダーバイアスを強調していると感じる。「マナーや言葉遣いがきちんとしていること=かわいい」となるのは疑問であり、マナーを守れなかったり、身だしなみやコミュニケーションに気を遣えなかったら、“ステキな女子”ではなくなるのだろうか。
255ページにわたる本書の内容をマスターしている“女子”は、確かに大人から見て素敵かもしれないが、不気味でもある。
また、「恋バナシークレットトーク」のトピックでは、「その人のどこがスキ?」というアンケートで、「スマホを勝手に見ても彼がまったく怒らなかった」と書かれていたことが引っかかった。
スマホを勝手に見るのはプライバシーを侵害する行為であるし、内閣府のホームページではデートDVの具体例として<メールなどをチェックする>と書かれている。読者からの投稿とはいえ、マナー本でありながらその点をスルーするのは不思議である。
『自分をもっと好きになる 【ハピかわ】かわいいのルール』には、言葉遣いや整理整頓、食事のマナーなど、性別関係なく役立つ内容も書かれている。『グッとラック!』で出た「大人でも役立つ」という意見は理解できるし、Twitter上では「男子に読ませたい」との声もあった。
しかし、本書は「女子向け」に書かれている。なぜ女子ばかりが“ステキ”であることが求められるのか。それは「女の子だからしっかりしていてほしい」「女の子は上品にすべき」というジェンダー規範が社会に根強く残っていることを示しているのではないか。