
星野源公式ホームページより
星野源が1月26日深夜放送『星野源のオールナイトニッポン』(ニッポン放送)で、「普通」「ストレート」などのワードを使わなくなった理由を説明した。
星野源はここのところテレビ番組や雑誌の連載で「シスジェンダー」「ヘテロセクシャル」といった言葉を使うようになっているが、リスナーからのメールに答えるかたちでその理由を説明した。
きっかけのひとつは、2020年6月からNetflixで配信されているドキュメンタリー映画『トランスジェンダーとハリウッド 過去、現在、そして』を見たことだという。
『トランスジェンダーとハリウッド 過去、現在、そして』は、20世紀はじめに「映画」という芸術が生まれて以降、作品のなかでいかにトランスジェンダーが差別的な描かれ方をしてきたかを暴くドキュメンタリー。映画がトランスジェンダーを物笑いの種や、精神病患者のシリアルキラーとして扱ったことにより、現実の世界に住んでいるトランスジェンダーへの差別が助長された責任を追及している。
星野は配信が始まってすぐにこの作品を鑑賞し、<いろんなものを見るときに、本当に世の中が違って見える>ほどの衝撃を受けたという。当時はドラマ『MIU404』(TBS系)の撮影をしていた時期で、監督など周囲におすすめしてまわるなど、『トランスジェンダーとハリウッド 過去、現在、そして』にのめりこんだという。
この映画体験を経て、星野はいままで心の底で微妙にくすぶっていた疑問と改めて向き合うことになる。『オールナイトニッポン』ではこのように語っている。
<自分の友だちにもゲイの友だちがいたりとか、あと、バイセクシャルの女の子が友だちにいたりとか、そういうのがあったりとかするなかで、たとえば『自分ってどう言ったらいいんだろう?』っていうのはよく分かっていなかったんですよね。
世の中でわりと“ストレート”みたいな言い方があったんだけども『ストレート?』って思って。『ストレートって言うのって、どうなの?』ってなんとなく思っているなかで、『ああ、こういう呼び方があるんだ』っていう。
『“ストレート”とか“ノーマル”みたいな言い方じゃない言い方があるんだ。じゃあ、これがいいや』って思って。それで、自分でそういうふうに説明するようになったという感じですね>
こうして発想の転換が起こり、生まれたときに割り当てられた性別と自分の認識する性別が一致する「シスジェンダー」、異性愛者を意味する「ヘテロセクシャル」という言葉を使うようになったという。
言葉は思考の枠組みである。新しい言葉は、新しい考え方を会得するきっかけにもなり得る。
「普通」「ストレート」といった言葉を基礎にものを考えると、マイノリティーを「普通じゃない」「それ以外の人たち」として排除する発想につながりかねないが、「シスジェンダー」「ヘテロセクシャル」という枠組みから考えれば、マジョリティーの側に属していても「自分の性自認は多様なもののひとつに過ぎない」ということが理解できるようになるはずだ。
「シスジェンダー」や「ヘテロセクシャル」という言葉もこの数年で人口に膾炙してきたとはいえ、地上波のテレビで使う際にはまだ意味の説明が必要だ。星野が口にしたことで初めてそれらの言葉を知り、ジェンダーについて考えるようになる人もいることだろう。そういった意味では星野の取り組みが社会に与える効果は決して小さくない。
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