バイデン大統領就任式〜マイノリティはアメリカを「完成」に導くか

文=堂本かおる
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写真:AFP/アフロ

 ついにドナルド・トランプがホワイトハウスを去り、ジョー・バイデンが第46代アメリカ合衆国大統領となった。あらゆるマイノリティを排斥し、アメリカを世界から孤立させ、新型コロナ・ウイルスの蔓延によって42万人もの死者を出したトランプ政権。その最後のあがきとしてトランプは不正選挙を騒ぎ立て、トランプ支持者は国家転覆を目論むクーデター未遂の暴動まで起こした。アメリカ、まさに苦難の4年間だった。

 1月20日の大統領就任式ではバイデンが「Unity(団結)」を何度も訴えた。トランプ支持者 vs. バイデン支持者、共和党 vs. 民主党、反コロナ vs. コロナ、陰謀論 vs. 事実、そして人種的マジョリティ vs. マイノリティ……。

 相対する二者の融和と団結を促すために、就任式ではわけてもマイノリティへのスポットライト、つまり多様化が目を引いた。

アマンダ・ゴーマン(詩人)

 今回の就任式のパフォーマーの中で最も注目を浴びたのは、詩人のアマンダ・ゴーマンだった。熟達の詩人が登場する就任式の慣例を破った弱冠22歳の青年桂冠詩人だ。アマンダの深い洞察と言葉、澄んだ目、優美な手の動きをまずは見て欲しい。

アマンダ・ゴーマン『私たちがのぼる丘』日本語字幕付き

ソーニャ・ソトマイヨール(最高裁判事)

 米国史上初の女性/黒人(ジャマイカ系)/南アジア系(インド系)の副大統領となったカマラ・ハリスの宣誓を執り行ったソーニャ・ソトマイヨール最高裁判事もやはり、米国史上初にして唯一のラティーナの最高裁判事だ。

 米領プエルトリコからニューヨークのブロンクスに移住した両親の元に生まれ、貧しい環境と子供の時期からの糖尿病をものともせず、米国司法の最高位に登り詰めている。2009年、最高裁にも多様化が必要と考えたオバマ大統領により指名された、ルース・ベイダー・ギンズバーグ最高裁判事(昨年他界)に続く史上3人目の女性最高裁判事でもある。

ユージン・グッドマン(合衆国議会警察)

 宣誓の前にハリス夫妻をエスコートしたのは、合衆国議会警察の警官ユージン・グッドマン。暴動の際、たった一人で暴徒の群れに対峙し、とっさの機転で議員たちがいた議場の反対方向に誘導したアフリカン・アメリカンの警官だ。自身の命を賭けての職務遂行が高く評価され、警備局長代理に昇進してのエスコート役だった。

ミシェル・オバマ~フィストバンプ

 就任式会場内には元大統領夫妻として招かれていたバラク・オバマとミシェル・オバマが佇んでおり、それを見たカマラは駆け寄り、ミシェルとのフィスト・バンプを交わした。お互いの拳を打ち付ける、黒人特有の挨拶だ。

 このシーンを中継で見た全米の黒人女性たちは鳥肌が立つほどに感動した。2008年、オバマ大統領第1期目の選挙戦中、集会のステージでミシェルが夫とフィストバンプを交わしたことがある。そのシーンがフォックスニュースのキャスターによって「テロリスト・フィストジャブ」と揶揄され、ニューヨーカー誌がアフロヘアで機関銃を背負ったミシェルと、オサマ・ビン・ラディンの装束をしたバラク・オバマがフィストバンプするイラストを表紙とした。ミシェルの顔は非常に醜く描かれていた。

 あれから13年、史上最も愛されるファーストレディとなったミシェルと、新たな副大統領カマラが共に黒人女性であり、その2人が全米中継の大統領就任式でフィストバンプを交わし、もはや誰にも貶められなくなったのだ。

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