自信を奪われた女の子が、キレキレでパワフルでユニークな自分を取り戻すために

文=原宿なつき
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 自分は強い、賢い、と思える、つまり自信がある人の割合は、女性より男性の方が圧倒的に多い。それは男女の性とか脳の差なんかではなく、背景には男性の方が自信を持ちやすい社会構造がある。6歳の子どもまで、「男の子は女の子より、えらい」と思い込むような構造が。

 2017年のアメリカ科学振興協会の研究によると、5歳の女の子は「男性も女子も同じようにえらい」と考えるのに、6歳の女の子に男性と女性の写真を見せて「えらい」方を選ばせると、女性を選ぶケースが少なくなったという。男性の方が「えらい」と考えるようになる社会的要因は多岐にわたるが、そのひとつが、学校で習う偉人、政治家、世界のリーダー、経営者、作家、科学者などに男性が多いことが挙げられる。女の子に自信を抱かせるようなロールモデルが少ないことは、女性が教育や仕事から排除されていた時代の負の遺産だ。

 また、男女別のおもちゃを通して、女の子は見た目や印象が大切で、男の子は能力が大切だというメッセージも受け取る。メディアやコンテンツの影響も計り知れない。2020年に日本で公開された国民的猫型ロボットの3DCGアニメ映画では、主人公の成人男性が「結婚とは男性が女性を幸せにするものだ」「彼女を幸せにする自信がない」と挙式から逃走、周囲の助けを経て成長(?)し戻ってくると、新婦が「よくできました」と褒める昭和な世界が繰り広げられていた。

 ドラマ、映画、バラエティ、ニュースなどで、しばしば女性は、「弱い存在」「幸せにすべき存在」「守るべき存在」として扱われ、「他者をケアし癒す存在」「リーダーではなく補佐的存在」「優しく美しい存在」として表彰される。「気遣い」が女性の生まれ持った特性であり、リーダーを目指すなんて「男勝り」だと言われたりもする。自分は男性に幸せにしてもらいたい、守ってもらいたいという女性もいるだろうが、これらはマイクロアグレッション(無意識の差別)だ。無意識的な日々の刷り込みが、自分で自分を幸せにする力を含めた様々な力を女の子が持っていることを見過ごさせ、女性の自信を削いでいく。

 複雑に重なった構造上の問題の結果、女性は男性よりも自信を持ちにくくなる。2015年に行われた48カ国の成人男女を対象とした調査では、女性は男性より自尊感情が低い傾向にあったという。

女の子の行動を促し、たくさんの方法を教える本

『世界の半分、女子アクティビストになる』(寺西のぶ子訳 晶文社)

 すでに生まれてしまった「自信の格差」は、どうすれば埋まるのか。ニューヨーク自由人権協会アシスタント・アドヴォカシー・ディレクターでフリーライターのケイリン・リッチは、著書『世界の半分、女子アクティビストになる』(寺西のぶ子訳 晶文社)にて、男女が公平な条件のもとで生活できるようにならないと、つまり、男女が同等の構造的な権力を手に入れないと男女の自信格差はなくならない、と述べた。

 そして公平で公正な社会を目指すためには、運動(変化をもたらすために起こす行動)が必要なのだ、と説く。『世界の半分、女子アクティビストになる』は、女の子たちに、運動を起こすことを促す本なのだ。

 メインターゲットは10代の女の子だが、変化を起こしたい、声を挙げたいことがあるという人にとって、その方法を示すという点でも役に立つ一冊だと思う。

 たとえば、以下のことが本書から学べる。

・投票を促す方法
・ロビイングの方法
・草の根運動の始め方
・運動プランの立て方
・ターゲット設定方法
・非営利団体、企業、地方の事業主、メディア関係者の協力の取り付け方
・支援者の見つけ方
・資金の集め方
・抗議方法にはどのようなものがあるか
・署名の集め方
・デモの仕方
・オンラインでの運動の始め方
・明確なメッセージの伝え方
・ボランティアの集め方、接し方
・自分が持っている特権を知る方法
・バーンアウトしないための、セルフケア方法

 未成年者をメインターゲットとしているため、「親の説得の仕方」「口座を開くときに親の助けは必要か」などにも言及されている。署名集めの際の例文なども掲載されており、痒いところに手がとどく丁寧さで、これ一冊あれば明日から運動が始められそうだ。

 しかし女性は「女性だから」という理由で常に被差別側に立つわけではない。マイノリティとしての立場から起こす運動についてだけではなく、自分が持っている特権の自覚を促す章もあり、バランスのよい一冊となっている。

世界をよりよく変える最小単位の運動

 『世界の半分、女子アクティビストになる』は、運動を促す本、つまり、女の子たちに「世界をよりよく変えよう」と励ます本だ。世界を変えられる力があなたにはあるのだ、と何度も語りかけてくる本書を読んでいると、自然とパワーがみなぎってくる。自信を取り戻させる本、とも言えるだろう。

 実際、本書では、女の子の自信を取り戻させるためのアクティビティがいくつか紹介されている。

 たとえば、性役割にバツ印をつけるというもの。Tシャツをつくり、サインペンでまず、「私は」と書く。その続きに女らしさのステレオタイプである、ガーリーな、おとなしい、かわいい、と書く。その特色を×印で消して、頭が切れる、強い、熱い、パワフル、自信がある、ユニーク、と書く。

 Tシャツを用意するのが難しければ、紙に書いてみるだけでもいいだろう。アファメーションというやつだ。か弱い、美しい、かわいい、守られるべき、サポート役になるべき、リーダーにはふさわしくない、理系には適さない、感情的だけれど知的ではない、といったメッセージをたっぷりと浴びて育ってきている女性は、たまには真逆のメッセージを自分に与えてみるべきなのだ。

 必ずしもあらゆる人類がリーダーになる必要はないし、サポート役も文系も大事だ。どんな自分でありたいか選ぶのは自由で、問題は、人生の序盤で知らず知らず奪われていた選択肢を取り戻すこと。どちらの自分がしっくりくるかは、その後に考えてみればいい。それもひとつの運動だと言えるだろう。

(原宿なつき)

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