
GettyImagesより
「小学生が妊娠」——その事実を聞いたとき、あなたはどう思うだろうか。
「小学生からの妊娠相談を受けている」と話している保健師の画像と共に<今の小学生ヤバすぎ>と投稿したツイートが拡散されている。
投稿自体は1月25日に行われたものだが、画像は昨年6月に放送した『news zero』(日本テレビ系)を切り取ったもののようだ。ちょうど、コロナ禍で若い女性からの妊娠相談が増えていることが問題視され始めた時期である。
拡散されたツイートには「妊娠させた大人の方がやばい」「親や兄弟からの性被害の恐れもある」「性教育の遅れのせい」などの指摘が多数であるものの、中には「自分は〇年も貞操を守っているのに」「小学生がセックスするのかw」などネタ化する投稿も見られ、そういった認識こそが”ヤバイ”と感じた。
深刻な性的虐待の実態と性教育の遅れ
Twitterでも指摘があったように、小学生の妊娠は性暴力の可能性もある。家族や親戚からの性的虐待や、ネットを通じてトラブルに巻き込まれたケースなどが考えられる。
厚生労働省によると、2019年度の児童相談所での虐待相談対応件数は19万3780件で、そのうち性的虐待は2077件、全体の1.1%だ。しかし、性的虐待は発見の難しさが指摘されており、暗数が多いとも考えられている。
2018年に公表された「神奈川県児童相談所における 性的虐待調査報告書(第4回)」によると、児童相談所が受理し「事実あり」とされた212件の性的虐待・性被害のうち、被害を受理した時点の子どもの6割は小学生もしくは中学生だった。また、虐待内容の調査ができた117件のうち「性器性交」は22件(19%)で、「性器性交」「肛門性交」「口腔性交」の事例は32%にあたる。
性暴力ではなく同世代同士の性行為で妊娠した場合でも、決して子どもの自己責任と断罪し、罰するべきではない。性行為の情報はすぐに子どもの手に届く状態なのに、避妊方法や妊娠した場合の対応といった情報は手に入りにくい社会にしている大人側の問題だ。「寝た子を起こすな」などと性教育を避けることも、子どもたちが誤った判断をする恐れを高めている。子どもが十分に性教育を受けていることは、自分自身を守ることにつながるはずだ。
また、妊娠した小学生に対して「命の大切さを教えたほうがいい」という意見も見られたが、命の大切さをわかってないから妊娠したわけではないだろう。性暴力であったり、望んで行った性行為でも性教育が十分でなかったから妊娠したのではないか。性教育なしで命の大切さだけ教えることは、仮に堕胎をすることになった場合に、背負わなくてもいい罪悪感を植えつけてしまうこともあり得る。
小学生からの妊娠相談があることは、子どもを性暴力から守れていなかったり、子どもたちが十分な性教育が受けられていないことを示しており、「小学生がヤバい」などと言っている場合ではない。ヤバいのは大人の方である。また、小学生が妊娠したことを「ヤバい」と煽れば、子どもが大人に相談しにくい空気を作ってしまう危険性もある。「ネタとして消費してもいい」と思ってしまった人は、なぜ小学生が妊娠してしまったのか、現在の社会の何が問題なのかを冷静に考え直し、「子どもが守られ、困ったことを相談しやすい社会」を作る一人であってほしい。
~妊娠に関する相談窓口~
■ピルコンにんしんカモ相談
https://pilcon.org/help-line/contact/ninshin-kamo
LINEアプリにて、医師監修の避妊や検査、支援先などの情報を即座に自動応答で答えるチャットボット。無料で何度でも使えます。
ID:@ninshin-kamo
■SOS赤ちゃんとお母さんの妊娠相談
http://ninshin-sos.jp/
望まない妊娠による悩みを抱えている人なら誰でも相談できる窓口です。
■チャイルドライン
https://childline.or.jp/
18歳までの子どもが電話またはチャットで相談できます。
■一般社団法人 全国妊娠SOSネットワーク
https://zenninnet-sos.org/
「全国のにんしんSOS相談窓口」のページからお近くの相談窓口を探せます。
実父の性的虐待はなぜ無罪になったのかーー性被害の実態について、知っておきたいこと
2019年3月、性犯罪の無罪判決が相次ぎ、物議を醸した。とくに世間の注目を集めたのが、3月26日に名古屋地裁岡崎支部で判決が下された、通称「岡崎事件」…