
Getty Imagesより
4年前と異なる株式市場の反応
バイデン政権誕生で、株式市場は4年前と異なる反応を見せました。4年前は事前にヒラリー・クリントン候補が圧倒的に優勢と見られながら、トランプ氏がまさかの勝利となったために、最初にこれが判明した東京市場で株が暴落しました。しかしこれも短期間に終わり、ニューヨーク時間になると、新大統領の景気刺激策に期待して、急速に株価は回復上昇に向かいました。この下げ局面で株を買った人がその後大きな利益を上げました。
これに対して今回は事前にバイデン候補が優勢と見られ、その大規模な財政拡張政策を先取りして、事前に株は大きく買い上げられました。そして選挙でバイデン氏勝利と分かるとさらに買い上げられ、S&P500やナスダックなど主要株価指数は最高値を更新しました。しかし、1月20日に無事就任式を迎えると、株価は急に頭が重たくなり、調整場面が多く見られるようになりました。
市場には「ニュースで買い、事実で売る」との格言があります。今回は早めにバイデン勝利を予想し、「ニュース」の段階で買った人が利益を上げていることになります。
対照的なトランプとバイデン
選挙を終えた今も米国の分断は変わりません。今回の大統領選挙は、良くも悪くも、トランプ大統領の信任選挙となりました。トランプ支持層にとって、トランプは既存の腐ったワシントン政治をぶち壊して改革する真のリーダーと映り、7500万人もの人が彼に信任投票を入れました。
しかしその一方で、彼の白人至上主義、女性蔑視、新型コロナの感染拡大放置などに批判が高まって批判票がこれを上回り、トランプ氏は敗北しました。
このため、バイデン大統領は分断を解消すべく、「すべてのアメリカ人のために働く」と強調しますが、1月6日のトランプ支持派による議事堂乱入事件は、米国分断の溝が簡単には埋まらない深刻さを示しました。
またバイデン氏を勝利に導いた新型コロナの感染拡大も、ニューヨークやカリフォルニア州のように、民主党知事のもとで感染対策が講じられる地域でも感染が大きく拡大しました。ワクチンの供給も遅れ気味で、バイデン氏はワクチン接種支援に4000億ドルあまりを付けましたが、感染が短期間に収束する見込みは立っていません。
結局、ここまでは米国の中で喜んだ人が「赤チーム」から「青チーム」に変わっただけで、トップが「何をしでかすかわからない危険な強いリーダー」から「強さはないものの無難なリーダー」に変わったことになります。それだけに、強いリーダーシップでアメリカを導けるかが気にかかります。
トランプ政権で勢いを失った旧勢力が挽回するか
トランプ前大統領は、これまで政財界で強い影響力をもっていた勢力(国際金融資本や軍産複合体)が築き上げた政治経済システムを壊すと言って登場。実際に就任早々、オバマ政権時にまとめたパリ協定やTPP(環太平洋パートナーシップ協定)、イラン核合意などから脱退し、WTO(世界貿易機関)、NATO(北大西洋条約機構)にも圧力をかけました。
トランプ陣営はキッシンジャー元国務長官などの支援の下に、こうした急激な路線変更を断行したのですが、バイデン大統領は就任したその日のうちにパリ協定に復帰するなど、トランプ氏の政策は次々と元に戻っています。
もっとも、トランプ氏を支えていた勢力が完全に敗退したとも言い切れず、彼らと考え方の近い民主党左派を通じて影響力を行使する可能性は残されています。
従って国際金融資本、軍産が旧来の影響力をそのまま回復するかはまだ不透明ですが、トランプ政権時とは明らかに方向性が変わるでしょう。
1 2