マイナンバーカードと成績の紐付けは、教育政策の質を高める?

文=畠山勝太
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Gettyimagesより

 昨年末、「マイナンバーカードと学校の成績などの教育データが結び付けられるかもしれない」という報道が話題になりました。報道後すぐ、SNSなどでは「個人情報が漏洩する可能性がある」「学校の成績が一生付き纏うのか」といった非難が殺到していましたし、みなさんも「何となく怖い」という感想をもっただろうと思います。

 「何となく良い/悪い」という感想を抱かれがちなトピックは、0か1かの極端な議論になることがたびたびあります。

 しかし、こうしたトピックは、やらないという選択も含めて、もしやるのであればどのように制度を設計するかを考えることこそが肝になります。0か1かだけで考えるのは、より良い教育を目指す上であまりにももったいないことになってしまいます。

 そこで今回は、マイナンバーカードと教育データの結びつきについてお話をしてみようと思います。何となく怖いな……と思っている読者の方に「なるほど、このトピックのここは怖いけど、あそこは怖くないな」と思ってもらえるようになれば幸いです。

最初の報道は誤報だった、らしい

 そもそも非難が殺到するきっかけとなった最初の報道は誤報だったようです。各社が揃って誤報をしたので、どこか特定の社の記事を紹介するのも気が引けるのですが、もっとも詳しく報じていた日経新聞の記事を参考に話を進めましょう。

 この記事の内容を2点に絞って紹介すると、政府は

①マイナンバーと学習履歴を紐づける
②マイナンバーを基に蓄積したデータを指導方法の改善や教育政策の検証に役立てる

指針を固めた、ということになります。

 この報道に、経団連の初等中等教育改革の第一次提言の中にある「個人の学習履歴を EdTech を用いて記録し、企業などが活用できるようになれば、企業は自らが求める人材を採用しやすくなる」という記述が結びついて、

③マイナンバーを基に蓄積したデータを、企業が人事に活用したがっている

という辺りに議論が飛び火したように見受けられました。

 一連の誤報記事が出てから1週間後には、これが誤報であることを解説した記事も出回るようになりました。

 何が誤報だったかというと、

①教育データが紐づくのはマイナンバーではなく、マイナンバーカード
②現在想定されている使用方法は、指導方法の改善・教育政策の検証・企業の人事への活用ではなく、転校・進学時に新しい学校に教育データを円滑に引き継げるようにする

という点です。

 これらは文部科学省の最近よくある質問でも取り上げられているので、現時点での行政のスタンスは当初の報道ほど積極的にマイナンバーを活用することは考えていないことがわかります。やはり最初に出た報道は誤報だったか、世間の反応を窺い知るために観測気球が打ち上げられたか、だったようです。

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