マイナンバーカードと成績の紐付けは、教育政策の質を高める?

文=畠山勝太
【この記事のキーワード】

教育データを蓄積すればできるようになること

 マイナンバーと教育データの結びつきに関して、どのようなものがありうるかを簡潔に図示してみます。

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 学校教育という営みを考えると、①家庭で育った子供が②学校へ行き、そして卒業して③就職するという大まかな流れがあります。

 ③は経団連が望んでいる、教育セクター内のデータを教育セクター外(企業)へ引き渡すというものですが、世論の反発が大きそうですし、そもそも高校や大学の成績を就職活動の際に提出すれば、人事の際に考慮したい学習履歴の大半はカバーされているでしょうから、この部分に取り組む価値は薄そうです。③については、あまり考察する価値も無いので、次に移りましょう。

 ②は教育セクター内のデータを教育セクター内で活用するというものです。具体的には、ある学校の教育情報を異なる学校に容易に引き渡せるように教育データを整備して、転校・進学をより円滑なものにするというものです。この点は、文部科学省も、当初の報道が誤報であるとした際に強調した、マイナンバー周りと教育データの結びつきの活用です。これは個人情報の保護さえしっかりできれば、大きな害や反対が出るようなものでは無いので、この部分の取組は確実に進んでいくはずです。

 ②の教育セクター内でのデータの活用が、異なる学校へのデータの引き渡しを容易にするという範囲に留まるのであれば、多くの専門家はポジティブな反応を寄せないはずです。

 しかし、日経新聞にコメントを寄せていた教育経済学の先生は、この部分に対してポジティブな反応を示していました。おそらくそれは、②は教育政策の検証を行うところまで視野に入れているということなのだと思います。

 なぜ、教育政策の検証が入るかどうかで②の評価が変わるのかを理解するために仮想の具体例を考えてみます。

 今話題の少人数学級の効果を計測したいとします。Aという学校で全面的に少人数学級を導入したところ、次の年に子供達の学力が向上したとします。しかしこの時点では、少人数学級導入のおかげで子供達の学力があがったのかははっきりしません。

 もしかしたら教育委員会が地域全体にICT教育を導入して地域全体の学力が向上したのかもしれませんし、人事異動で大変優秀な新しい校長先生がそれまでの優秀ではない校長先生と入れ替わる形で赴任して来たのかもしれません。他にも学区内で新たに大学生達が放課後補修を大規模にしてくれるようになったなど、別の要因の影響の可能性が捨てきれないからです。

 このときちゃんと教育データを取っていると、例えばその学校で実験的に国語で少人数学級を実施してみたところ、国語の成績ないしは授業態度などの変化が、他の科目の変化と比較してどうだったかを検証することが出来るようになります。つまり少人数学級の効果をよりクリアな形で出すことが出来るようになるわけです。

 毎年教育データが全ての科目で蓄積されるようになれば、さまざまな教育施策の効果が検証できるようになります。

 これも個人情報の保護さえちゃんと出来れば、大きな害や反対が出るようなものでは無いので、この部分の取組はぜひにも進めていく必要があります。ただ、これだけであれば、何も教育セクター外にデータが流出する恐れがあるマイナンバーカードではなく、生徒IDを作ってそれと紐づければよいのかもしれません。

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