店頭にはカラーペン、カラーボールペンが溢れています。普段の筆記には使わないカラーでも、いやそういったカラーだからこそ、こういう機会に派手に使ってみたいものです。
最近はまたラメ入りのカラーペンが増えました。ラメのブームはわりと定期的に店頭を賑わしている印象がありますが、その中で画期的な製品が登場しました。ついに、ラメのボールペンが「消せる」ようになったのです。
それが、パイロットコーポレーションの「ケセラメ」です。
消せるボールペンと言えば、同じパイロットコーポレーションのフリクションボールシリーズを思い浮かべますよね。確かにあの製品は、摩擦熱でインキ色を無色化することによって「消す」を実現した製品でした。ということは、ケセラメもフリクションの技術を応用していると想像できます。
しかし、ラメをフリクションインキ同様にこすって消せるものでしょうか? あんな粒が大きくてきらきらと輝くものが、こすって無色になるのでしょうか?
ケセラメはラメゴールド、ラメシルバー、ラメピンク、ラメバイオレット、ラメグリーン、ラメブルーの6色が用意されています。ボディはフリクションボールノックと同じデザインで、クリップをノックしてペン先の出し入れを行います。尾栓にはお馴染みの消去用ラバーがあり、フリクションボールノック同様に取り扱いの注意──証書類や宛名に使わないこと、温度で変化すること──がボディに記載されていますが、ひとつだけフリクションと決定的に異なる記載があります。
「60℃以上になるとインキがシルバー調に変化します」
60度を超えるだけでは無色にならないとなると、こすって消すこと自体に疑問が湧きます。温度だけで消えない色が、本当に擦るだけで消えるのか?
実際に書いてみましょう。文字でも線でも絵でも、書いたものを専用ラバーで擦れば、確かに消えます。ラメが紙面に残ることなく、本当に綺麗に消えます。
ですが、フリクションシリーズとはここでも違いがはっきりと出ます。
消しかすが出るのです。
消しゴムのように見る見るうちに減っていく、というわけではありません。ですが、明らかに消しかすが出て、それを手で払う必要があります。
実はケセラメの専用ラバーは、従来のフリクションシリーズについているものより柔らかく、消した際にももちもちした感触が指先に伝わってきます。このラバーは筆線を消す際、パール+ラメ顔料のパール部分を巻き込んで消しゴムのごとく紙面から剥がし取り、それを消しかすとして吐き出すのです。
実験してみました。ケセラメの筆線を従来のフリクションボールについているラバーで擦ったらどうなるか──パール+ラメ顔料のパール部分は紙面に拡がって残ります。フリクション側のラバーにはキラキラした銀色の粉が残り、清掃が必要でした。
「60℃以上になるとインキがシルバー調に変化します」とはつまり、温度変化だけではラメが残るよ──パール+ラメ顔料は専用ラバーで擦り取ってやらないと綺麗に消せないよ、ということだったのです。
なるほど、ゴールドやピンクやブルーといった「色」はフリクションと同じ原理で無色化していても、きらきら輝くパール部分じたいはフリクションインキが発色するメカニズムとは別物だから、温度では無色化できないんですね。
それが判ると、ケセラメがフリクションシリーズとは一線を画していることが理解できます。専用のラバーを持ったこのボディでないと、ケセラメは性能を発揮できないのです。フリクションシリーズと混ぜてはいけないのです。
本製品の特徴は、とにかく「ラメのペンなのに失敗しても安心」という一言に尽きます。書くだけでなく、塗ったあとにラバーで擦って無色化し、さらにそこに書き込むというテクニックも使えますので、カード作成などには今までにない威力を発揮できそうです。
黒い紙に対しての隠蔽力も悪くありません。文字や絵を描いてもはっきり見えます。ただし、わたしが試しに描いた黒い紙はこすって消すには相応しくない紙だったようで、文字を完全に消去することができませんでした。みなさまも、もしイラストなどを描かれる際には、ケセラメと紙との相性を確認してから作業に入られたほうがよろしいかと存じます。
ラメ仕様でありながら、フリクションボールノックと同価格の230円(税抜)というのは破格のお値打ち感があります。数量限定製品ですので、ぜひこの機会にお手にとって、その不思議な消し心地をお楽しみ下さい。
(他故壁氏)