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東京五輪・パラリンピック組織委員会の会長・森喜朗氏の発言が立て続けに波紋を呼んでいる。
ひとつは、今月2日に自民党本部で開催された会合にて、聖火リレーでの密を避けるため<有名人は田んぼを走ったらいいんじゃないか>と発言した件。そして、ネット上での批判が特に大きいのは、朝日新聞が報じた3日の日本オリンピック委員会(JOC)の臨時評議員会での以下の発言だ。
<女性がたくさん入っている理事会は、理事会の会議は時間がかかります。(中略)女性っていうのは競争意識が強い。誰か1人が手をあげていうと、自分もいわなきゃいけないと思うんでしょうね。それでみんな発言されるんです>
<女性を必ずしも数を増やしていく場合は、発言の時間をある程度、規制をしていかないとなかなか終わらないで困るといっておられた。だれが言ったとは言わないが>
<私どもの組織委員会にも女性は何人いたっけ? 7人くらいか。7人くらいおりますが、みんなわきまえておられて。みんな競技団体からのご出身であり、国際的に大きな場所を踏んでおられる方々ばかりです。ですから、お話もシュッとして、的を射た、そういう我々は非常に役立っておりますが。次は女性を選ぼうと、そういうわけであります>
Twitter上では「女性差別だ」「女性の発言を萎縮させる」「女性蔑視だけでなく、根拠がない決めつけをしておりリーダーとして不適切」と批判が殺到。「#森喜朗氏は引退してください」のハッシュタグでの抗議も行われている。また、国内だけでなく海外メディアも森氏の発言を取り上げ、問題視している。
伊沢拓司は「女性蔑視“ともとれる”ではなく、しっかり批判すべき」と明言
2月4日の『グッとラック!』(TBS系)でも森氏の女性蔑視発言について議論がされた。
コメンテーターの髙橋知典弁護士は<世界的な感覚からも大きくズレているはずで、これでもしも何もお咎めがないということであれば、オリンピックとかパラリンピックとか、もともとのスポーツの公共性といいますか、広く色々な人に関わってもらおうというこれ(方針)に対して酷く泥を塗っている>と指摘し、「今すぐにでも辞任されるべき」と述べた。
田村淳氏も<今巻き起こっている森さんに対しての批判的なメッセージを森さんはどう受け止めて、どう僕たちにアナウンスしてくれるのかって僕は注目していますし、僕は次の会見で身を引くって会見にしてほしいなとは思います>とコメント。
MCの立川志らく氏も<男女一緒にやるのは当たり前なのに、「女性の数を増やす」という言い方もすごく嫌ですね><女性の選手たちも「この方(森氏)がトップでいる限り、私たちオリンピック出ませんよ」っていうくらい声をあげてもいい>と不快感を示した。
またコメンテーターでクイズ王の伊沢拓司氏は、番組のフリップに「女性蔑視ともとれる」と書かれていたことについて、<「ともとれる」というか、そうとしか僕は見えなかった、擁護のポイントがあまりないなと思っていて、本当に属性による決めつけで><(メディアは)伝え方をもうちょっときっちりやった方がいいなと思いますけど、曖昧ではなくて、しっかりと批判を向けるべきことなのではないかと思います>と報道のあり方にも疑問を呈した。
オリンピックでは「多様性の尊重」「差別のない」を掲げている
森氏は、自身の女性への発言について<あまり私が言うと、これはまた悪口を言ったと書かれるが>と言及していたが、これは悪口などではなく“根拠のない決めつけ”という女性蔑視である。
組織委員会の女性たちについて<お話もシュッとして、的を射た、そういう我々は非常に役立っておりますが>と述べたことも、本人は誉めたつもりかもしれないが、失礼な話だ。会議は意見を交換し、議題に上がった内容をより良くするための検討の場だ。組織委員会の女性たちが「一般的な女性と異なり、発言が少ないから役立っている」と評価するならば、何のための会議なのだろうか。加えて「発言が少ない女性の方が良い」と表明することは、今後、女性委員の発言を萎縮させる行為でもあるだろう。
なお、日本オリンピック委員会のホームページで公開されている「オリンピック憲章」には下記のように書かれている。
<スポーツをすることは人権の 1 つである。 すべての個人はいかなる種類の差別も受けることなく、オリンピック精神に基づき、スポーツをする機会を与えられなければならない。 オリンピック精神においては友情、 連帯、 フェアプレーの精神とともに相互理解が求められる>
<このオリンピック憲章の定める権利および自由は人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教、政治的またはその他の意見、 国あるいは社会的な出身、 財産、 出自やその他の身分などの理由による、 いかなる種類の差別も受けることなく、確実に享受されなければならない>
また、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会のホームページでは、東京2020大会の基本コンセプトの一つとして、<一人ひとりが互いを認め合い(多様性と調和)>を掲げ、<多様性は、年齢、人種や国籍、心身機能、性別、性的指向、性自認、宗教・信条や価値観だけでなく、キャリアや経験、働き方、企業文化、ライフスタイルなど多岐に渡ります>と書かれており、森氏の発言が、多様性を尊重し差別のないオリンピックの方針に反しているのは明白だ。
森氏は4日に毎日新聞の取材を受け、<一般論として、女性の数だけを増やすのは考えものだということが言いたかった。女性を蔑視する意図はまったくない>と弁明したものの、「根本的に理解できてない」「あの発言が女性蔑視と思ってないこと自体が問題」と批判が集まり、火に油を注いでいる状態だ。
また、同取材では<責任を果たさなければならないと思っているが、辞任を求める声が強くなれば、辞めざるを得ないかもしれない>と答えていたものの、同日の記者会見では「辞任するつもりはない」と宣言。発言自体は撤回するとしたものの、記者の質問に<面白おかしくしたいから聞いてんだろ?>と逆切れする一幕もあった。
報道によれば、森氏が問題発言をした際、JOCの評議員会メンバーからは笑い声があがったといい、周囲の人間が止めなかったことも問題視されている。根本的な人権や差別への学びを進めなければ、森氏と同様の失言は繰り返されてしまうかもしれない。