じわり広がる「#ロイヤルホストを守る市民の会」。幸福かつ断片的な記憶を辿る/代表・高橋ユキ

文=高橋ユキ
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(編集部撮影)

 今、Twitterでにわかに増殖しているハッシュタグ「#ロイヤルホストを守る市民の会」。発起人はライターの高橋ユキさんだ。ファミリーレストランながら高級感が漂い、丁寧に調理された食事とスタッフのホスピタリティで多くの人々に愛されるロイヤルホスト、略してロイホ。しかし高橋さんは、ここを「ロイホ」とは呼ばない。ただ行きつけのロイヤルホストに通っては美味しそうな写真を撮って、「#ロイヤルホストを守る市民の会」とTwitterで呟く。一体なぜ?

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季節限定のフルーツパフェが嬉しい/おなじみ・アンガスサーロインステーキサラダ。(高橋ユキさん提供写真)

 新型コロナウイルスの感染拡大により、ロイヤルホールディングスが運営する70店舗を閉店するーーそんなニュースが流れたのが昨年5月。ロイヤルホストも大量閉店してしまうのでは? 不安が日本中のロイヤルホスト愛好家たちを襲った。私がツイッターアカウントで「ロイヤルホストを守る市民の会」代表を勝手に名乗り始めたのはそんな頃だ。昼下がりに入ったロイヤルホストでパンケーキの写真を撮り、アップした。

 私は普段、刑事裁判を傍聴して記事を書いているが、裁判所に通っていると、敷地の外で、被告人や民事裁判当事者を支援する方々が配るビラをもらうことがある。その団体名によくあるのが「XXさんを救う会」「XXを支援する会」そして「XXを守る市民の会」だ。ロイヤルホストを守る「市民の会」としたのは、そんな彼らへのオマージュである。

 「ロイヤルホストを守る市民の会」は、皆で集って大量に注文するわけでもない。当然である。私が勝手に同会代表を自称しているだけであり、会員もいなかったからだ。

 会員を増やして一大組織にしようなどという野望も皆無だった。ロイヤルホールディングスも困惑するはずだ。ましてや「【拡散希望!】ロイヤルホストの大量閉店を皆で食い止めましょう!食べて応援!」などと皆を巻き込もうとツイートする性分でもない。むしろそういうことは苦手なほうだ。それにたぶん、そんなツイートでもしようものなら「他にも大変な思いをしている飲食店があるんですよ!」と批判が来る。百も承知なことを見知らぬ者から言われるのは御免被りたい。そんなわけでの「ロイヤルホストを守る市民の会」だった。

 打ち合わせや休憩でロイヤルホストを利用した際に「ロイヤルホストを守る市民の会」と添えてツイッターで呟くだけの行為。本当に守れているかは正直わからない。いやたぶん、そんなに力になれてもいない。ただ私はロイヤルホストが好きだからなくなってほしくない、その意思表示をしているだけである。

 ところがこのひとりよがりで、わがままな、謎めいたアクションに乗ってくれる方々が少しずつ増えてきて、いまや「#ロイヤルホストを守る市民の会」とタグ検索すると、たくさんのロイヤルホストツイートを見ることができる。嬉しいのは当然だが、驚きと恥ずかしさも同じくらいある。

 ロイヤルホストはもともと打ち合わせでよく利用していた。書籍や雑誌の編集者と行くこともあれば、記者仲間と行くこともあった。最初は「ロイヤルホストでいいかぁ」だったが、次第に「ロイヤルホストにしませんか」最後は「ロイヤルホストに行きましょう」と変化していった。

 最近、恋愛ものの少女漫画をスマホで読むのにハマっているが、この構文に照らせば、最初は気にも留めていなかった隣の席のハイスペックな同僚が、海外出張することになり、初めて喪失感を抱いた主人公が自分の気持ちを見つめ直したとき、いつもそばに彼がいた……あっ私、彼が好きだったんだ……と自覚する流れに似ている。いまや打ち合わせだけでなく、遠出したときなども、ついロイヤルホストを利用してしまう身となってしまった。

 対象に感じる魅力は人により異なる。私がその魅力を語っても、異論を挟みたくなる方もいるはずだ。だがあえて「ロイヤルホストを守る市民の会」代表としてひとつだけ魅力を挙げるとするならば、ロイヤルホストにはファミレス……ファミリーが利用するレストランという枠にとどまらない包容力がある。ひとりでも、家族とでも、打ち合わせでも、あらゆるシーンに対応できるのが、最高に良い。

 とはいえ、そんな多面体のロイヤルホストとのファーストコンタクトは、おそらく家族との利用であろう。「ロイヤルホストを守る市民の会」ツイートをしつこく続けたおかげで、いまや同会も仲間が徐々に増えてきているが、料理の写真に、家族との思い出を添えてツイートしてくださっているのを何度か拝見した。同会代表の私にも、ロイヤルホストと家族との思い出がわずかに残っている。もはや断片的で、思い出とすら言えない。

ローラースケートを滑ったら、ロイヤルホストへ

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味もルックスも芸術的な苺のブリュレパフェ/安心な美味しさ・十勝あずきクリームあんみつ。(高橋ユキさん提供写真)

 それは80年代前半。まだ私が小学生のころ、母は私と弟を赤いホンダの車に乗せ、よく近くのローラースケート場に連れて行ってくれた。光GENJIブームの前だ。洋楽の流れるスケート場を一人で黙々と滑るのに夢中だった。ただ、そこを母親と一緒に滑った記憶はない。彼女はこうした遊び場やデパートに私と弟を置いて、ふらっと一人になることがよくあった。数年前に離婚して戻ってきた北九州市の実家で、幼い私と弟との3人暮らし、一人になりたいこともあったのだろう。「だろう」なんて書いているのは、もう本人に確かめることはできないからだ。

 夕方になると母親はどこかから戻ってきて、私と弟をまた車に乗せ、近くのロイヤルホストに寄る。これが“ローラースケート場に行く休日”のパターンだった。何を食べたのかも、母親が何を話したのかも覚えていないが、覚えていないということは、そのパターンの休日で悪い出来事が起こらなかったのだと思う。オレンジ色の照明がぼんやり光る店を、駐車場から眺めた……とか、ガラス張りのドアを開けた……とか、薄暗い外国みたいな店内……というような記憶しかない。

 徐々に母親との仲も、家庭の財政状況も悪くなるため、こんな休日は長くは続かなかった。私の中で家族とのロイヤルホストの記憶は「良かった頃の思い出」だ。それ以降、家族の外食は近所の国道沿いの薄暗いファミレス「ポンキッキ」に替わる。ポンキッキは暗黒時代である。

 家族とのロイヤルホストの思い出があまりに断片的すぎるので、これが本当の自分の記憶なのかが不安になり、地名などを手掛かりにネットを検索してみた。そしてたどり着いた結論は、どうもこれは本当の記憶であり、私が当時行った店は、1971年にオープンしたロイヤルホストの一号店だったということだ。

 ロイヤルホールディングスは福岡発祥であり、もともと地元で「ロイヤルホスト」のことは「ロイヤル」と呼ばれている。私がロイヤルホストをロイホと略さないのは、福岡出身者の面倒臭いこだわりである。そしてまた調べたところ、この1号店は2012年には「カウボーイ家族」にトランスフォームしていた。ロイヤルホストだった頃の面影は残っているようなので、母親の一周忌の際にも、寄ろうと思う。

(高橋ユキ)

「 #ロイヤルホストを守る市民の会」イベントを開催します

 驚くことにイベントを行うことになりました。皆さんとロイヤルホストの魅力や思い出を語り合いたいと思います。

▼3/14(日)13:00~15:00
#ロイヤルホストを守る市民の会

【出演】
高橋ユキ(ロイヤルホストを守る市民の会 代表)
春日太一(ロイヤルホストを守る市民の会)
能町みね子(同)
ジェーン・スー(同)

OPEN 12:30 / START 13:00(END 15:00予定)

会場+配信チケット¥2,200(+ドリンク代)→ peatixにて発売中!! 限定50枚
配信チケット¥2,200 → キャスマーケットにて発売中!!

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