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今月4日、謝罪のために開かれた東京五輪・パラリンピック組織委員会の会長・森喜朗氏の会見は、国民のさらなる怒りを呼ぶ結果となった。
3日に行われた日本オリンピック委員会(JOC)の臨時評議員会で、森氏は「女性が多い理事会は時間がかかる」「私どもの組織委員会の女性はみんなわきまえておられて」などと発言。国内外から「女性蔑視」「根拠のないひどい決めつけ」と大きく批判されている。
4日の記者会見では<発言を致しました件につきましては撤回をしたい。それから、不愉快をされた皆様にはお詫びを申し上げたい>と撤回・謝罪したうえで、「辞任は考えてない」と述べた。
森喜朗氏が会見で記者に逆ギレ「面白おかしくしたいから聞いてんだろ?」 明らかな女性蔑視も辞任せず
東京五輪・パラリンピック組織委員会の会長・森喜朗氏の発言が立て続けに波紋を呼んでいる。 ひとつは、今月2日に自民党本部で開催された会合にて、聖火リ…
「基本的な認識として女性の話は長いと思っているのか」という記者の問いに、森氏は、<最近女性の話を聞かないからあんまりわかりません>とピントのズレた回答。「オリンピック精神に反するという話もされたが、そういう方が組織委員会の会長であるのは適任なのか」という質問には<あなたはどう思いますか>と逆質問するなど、チグハグな受け答えが目立った。
また「女性が多いと時間が長くなる」という発言について「誤解ではなく誤った認識ではないか」と聞かれると、<そういう風に聞いておるんです>と言い、さらに記者から「各競技団体から『女性が多いと話が長い』という話が上がってるのか」と問われると<そういう話はよく聞きます>と回答。様々なスポーツの競技団体に女性差別が蔓延しているということなのだろうか。
さらに記者から追及されると<面白おかしくしたいから聞いてるんだろ>と逆ギレする姿も。森氏の会見は謝罪会見ではなく“逆ギレ会見”と言われ、「謝罪になってない」「全然反省してない」と批判が殺到している。
2月5日の朝のニュース番組でもこの問題が取り上げられた。『グッとラック!』(TBS系)では、コメンテーターのフワちゃんが「会見が当初の目的と全くズレている」とコメント。
同じくコメンテーターのアンミカ氏も、「そもそも根本的に女性蔑視って何なのかご本人が自覚してない」「途中『聞きたくない』とおっしゃっていたが、自分の都合のいいことだけ言いたいのは謝罪にはならないですよね」と言及した。
田村淳氏も<記者の方が、誠意をもって質問しているのもさえぎって途中でまだ質問が終わってないのに喋り始めたりとか、質疑応答のルールすらこなせないので、そんな人に女性蔑視のことを語ってもらおうと思っても無理がありますよね。人間を人間として見てないし、人と人とのコミュニケーションがとれないわけですから>と非難し、「僕は森氏を諦めました」と語った。
玉川徹氏「自分の中にも差別の芽があり、戦い続けなくてはいけない」
『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)では、「会議の時間が長い」と名指しされた日本ラグビーフットボール協会の理事の谷口真由美氏に取材。谷口氏は次のように話した。
<空気は読みますけど、空気に支配されずに必要なことは必要なこととしてお話する、それは会議ですから。日本の未来のラグビーのためにならないと思うことについては発言します>
<「本来、女がいてはならない場に入れてやっているんだからわきまえとけよ」というふうに聞こえるんですよね>
<トータルで見たときに、オリンピックのポジティブな側面の中に人権とかジェンダーとか平等を達成するということも入っていると思うので、残念なご発言だったなと>
なお、ラグビー協会の広報は番組の取材に<女性理事が増えたことで、倍時間がかかっているような認識はありません>と回答している。
さらに番組では、問題発言のあった会議にオンラインで参加していたJOCの山口香理事にもインタビューしており、山口氏は<これが世界に発信されたということは個人の見解ではなく、日本人がいまだにそういうことを思っているんではないかということを世界に示されてしまったということもでもあるんですね>と、世界からの評価に影響することを指摘。
スタジオでは、レギュラーコメンテーターの玉川徹氏が「今後が問われると思う」と述べた。
玉川氏<謝罪したからいいんじゃないかってことにはできないと私は思います>
<オリンピックという範疇の問題だけではなくて、日本の性差別の問題になっちゃっていますよね、世界的にも。日本は性差別とどう向き合うのかっていうのが問われている段階だと私は思うんですよ>
また、玉川氏は「日本はジェンダーギャップ指数が低いが、順位の高い欧米も完璧ではなく差別と戦っている」とも言及。
玉川氏<戦いっていうのは内なる差別意識との戦いで、正直に言えば。私の中にも性差別を含めて差別の芽があるんですね。これと僕自身も戦っている。国際社会もそういうふうなものと戦っているんです>
そして<本来ならば総理大臣など、しかるべき立場の人や組織内部の自浄作用として森さんに引導を渡さなくてはいけないと思います。でもどうも昨日から見ていると引導を渡せないだなと(思います)。でしたら、国民が森さんに引導を渡さなくてはダメ>と述べ、<私も国民の一人として言います。やめてください。やめなかったら、日本全体がもうこれでいいと。森さんは謝罪したからもういいよと、認めたことになっちゃうんですよね。それはよくないですよね>と強く主張した。
玉川氏が言及したように、性差別に限らず、誰もが差別する心をどこかに持っている。人権問題に関する感覚は数式のように一対の答えがあるわけでも、ゴールがあるわけでもなく、自分と向き合いアップデートを続けていく必要があるだろう。
女性蔑視が“笑えるネタ”になる日本が抱える問題
森氏は謝罪会見後の4日夜『プライムニュース』(BSフジ)で、発言を撤回した理由について<私の話はそこまで細かく外国行って説明するわけにもいきませんからね。だからこれは私は撤回したほうが早いと>と明かしている。やはり何が問題なのか理解する気はないようだ。
また、一部報道によればこの件について、IOCの広報担当者は<森会長は発言について謝罪した。これでIOCはこの問題は終了と考えている>と回答しているようだ。これにも「あれで十分な謝罪だとするなら、IOCも差別を容認しているようなもの」「オリンピック憲章を尊重できないなら、開催しない方がいいのでは」とIOCの方針を問題視する声も広がっている。
発言をしたのは森氏であるが、これは彼だけの問題ではない。森氏によると各競技団体から「女性が多いと話が長い」という話があるといい、報道によると、森氏が問題発言をした場では笑い声があがったという。あの会見で幕引きにすれば、政界やスポーツの世界で女性蔑視は温存されるだろう。